カフェ参詣


はじめてのカフェに入るときの緊張を、
なんと例えたらよいのだろう。

しかし、勇気を出して悪いことはない。

思えば、
名前こそ知っているが、行ったことのない
カフェがたくさんある。

カフェは、寺である。
カフェは、体験しなければ意味がない。


僕は、カフェを参詣することにした。




第11回 神楽坂『日本茶 茜や』




神楽坂といえば
料亭やら、バーやらが軒を連ね、
芸者さんがお座敷を飛び回る。

そんな、「大人が遊ぶ町」 として
西の祇園、東の神楽坂と並び称される
風情ある町である。
(近年はなかなか、往年のようには
いかないようだが)

今回は、そんな神楽坂の一角にある
ちょっと変わったカフェに参詣した。



どー見ても、普通のアパートだが・・・


日本茶 茜や』は、
グラフィックデザイナーであり
建築士でもある柳本あかねさんがオープンした
和風のカフェである。

入り口は、上の写真のように普通のアパートだが
中に入ると、さらにまた驚く。

中も、普通のアパートなのである。




築50年は経つという古いアパートに
玄関先で靴を脱いであがる。

まるで、お店ではなく
人の家に招かれたような
感覚におちいり、思わず
「おじゃまします」
と言ってしまう。

当然、広さも四畳半ほどしかないため
カフェに入れる人数も、多くはない。
けれど
いちど腰を落ち着けてしまうと
すっかり、リラックス。

学生時代に住んでいた
古いアパートを思い出した。




さらになんとこのカフェは、
事務所も兼ねている。



カフェ空間の向こうには、事務所が。ちょっと近代的。


さて、メニューである。



小さくて、可愛いメニュー。


『日本茶』と店名にあるだけあって
メニューは、ひとつ。
お茶 + 好きなお菓子2点で、500円。

さらに、お茶を入れる器も選べる。




棚に茶碗が並んでいて
その中から、好きな器を選ぶのだ。

「午前中にお客さんがたくさん来たので、
(茶碗が)歯抜けみたいになってますけど」

と、柳本さんが笑う。
(着物を着た女性が店員さんである。
おそらく柳本さんだろう)

こちらもすっかりリラックスしているから
会話も、心なしか弾むような気がする。

そしてしばらくすると
待望のお茶が。




そして、お菓子が付いてくる。




お茶は、四杯くらいは楽しめるという。

まず一杯目は、お湯を冷まして淹れる。
・・・で、飲んだら、甘いのだ。

僕は普段、お茶を飲みつけないので
お茶の味には明るくないけれど、それでも
「おいしいな」とわかる。

二杯目以降は、お湯を直接急須へ。

だんだん渋みが増してくるけれど
嫌な感じはしない。
入れるたびに、味のグラデーションが楽しめる。




押入れと思われる収納スペースには
おしゃれな小物が飾ってある。

そして、雑誌・書籍コーナーには
1958年発行の「暮らしの手帖」が!!

この雑誌がいちばん輝いていた時代の
号を見つけ、僕は大興奮したが、
この喜びは共感してもらえなかった。




すっかり長居をしてしまったので
そろそろお暇をしようと思う。

外に出ると、神楽坂の毘沙門天には
桜が咲いていた。

(了)



今までの巡礼記録
第1巡礼:FLOOR!
第2巡礼:YonchomeCafe
第3巡礼:efish
第4巡礼:イノダコーヒ
第5巡礼:カフェーパウリスタ
第6巡礼:カフェ・アプレミディ
第7巡礼:HERE WE ARE marble
第8巡礼:喫茶 ミケネコ舎
第9巡礼:沙羅
第10巡礼:金魚CAFE