はじめてのカフェに入るときの緊張を、
なんと例えたらよいのだろう。
しかし、勇気を出して悪いことはない。
思えば、
名前こそ知っているが、行ったことのない
カフェがたくさんある。
カフェは、寺である。
カフェは、体験しなければ意味がない。
僕は、カフェを参詣することにした。
カフェの密集地帯、下北沢に降り立った。
とてもゴチャゴチャした町だ。
そのゴチャゴチャ具合がとても愛らしい。
もしあなたがサブカルチャーを嗜んでいると
豪語するなら、
さしずめ下北沢はスイスのジュネーブ、
もとい、イスラエルのエルサレムがごとき
聖地ではあるまいか??
「喫茶 ミケネコ舎」は、そのゴチャゴチャした
通りから、少しだけ離れたところにある、
レトロな喫茶店である。
古道具屋が1階を占めている。
ここから、昭和へのタイムトリップが始まる。
道具屋の脇の階段を上がっていく。
この建物は昔、実際に下宿として使われていて、
人が住んでいたらしい。
やはり、だいぶ老朽化が進んでいるらしく、
床がギシギシと音を立てる。
休みの日だったせいかだいぶ混んでいて、
案内されるまでしばし待つ。
下宿だった、ということも納得できるような
カフェのなか。
案内された席は、店の奥に作られた、
勉強机のような一角。
電気スタンドが手元を照らしていて、
昭和の学生にあったような気持ちになる。
このまま暮らし始められそうだ。
注文したのは
『茜スミレ』
という名のブレンド。
コーヒーが、コーヒープレスという方式で
淹れられてくる。
今まで見たことがない。
コーヒーの味と、香りをより楽しめるとのこと。
とてもフルーティーな味がした。
心なしか桜の風味がする(ような気がする)。
今回は一人できたけれど、
このカフェは、とてもおしゃべりに向いている。
ここに座っていると、心がリラックスして、
ウキウキしてくるのだ。
日曜日の、短いタイムスリップは終わった。
(了)