はじめてのカフェに入るときの緊張を、
なんと例えたらよいのだろう。
しかし、勇気を出して悪いことはない。
思えば、
名前こそ知っているが、行ったことのない
カフェがたくさんある。
カフェは、寺である。
カフェは、体験しなければ意味がない。
僕は、カフェを参詣することにした。
京都ネタがまだつづきます。
さて、京都のカフェ参詣第2弾は、泣く子も黙る
「イノダコーヒ」である。
「京都の朝はイノダから」
でおなじみのイノダコーヒは、西日本の
喫茶の顔である。
全国に支店があり、あるいはデパートで
豆を買い求めることもできる。
その本店を参るわけである。
ここに参詣しないというのは、
たとえば神社界でいえば、三重県まで行って、
伊勢神宮を素通りしてしまうようなものだ。
わかりづらいかもしれないが、そういうことである。
京都の三条にある本店。風情のある入り口。
イノダコーヒの特徴的な点は、
このウェイターさんと言える。
サービスの心。
一言でいえばそういうことだ。
この佇まいに、モダンの香りを感じる。
そして第二の特徴は、
コーヒーに砂糖とミルクがあらかじめ入って
運ばれてくる、という点である。
飲む者に選択の余地なし。
痛快なことだなあ、と古文のような嘆息を
漏らしつつ、
「アラビアの真珠」を注文したのだが、
「砂糖とミルクはお入れしてよろしいですか?」
と聞かれた。
どうやら、
今では問答無用ではなくなっている。
それならそれでいい気もする。
それにしても、なんとも豪華な内装だ。
こういうところでコーヒーを飲んで
一日を始められたら、何と豊かな生活だろうなあ
と思う。
暗くてわかりづらいかもしれないが、
通路のようなところに、鳥かごが並んでいる。
とにもかくにも、
喫茶というものが街に根付いている。
そういう印象を受けた。
生活のリズム中に、
「お茶をする」
という時間がきちんと入っているというのは
きっと贅沢なことなんだと思うのだ。
(了)