はじめてのカフェに入るときの緊張を、
なんと例えたらよいのだろう。
しかし、勇気を出して悪いことはない。
思えば、
名前こそ知っているが、行ったことのない
カフェがたくさんある。
カフェは、寺である。
カフェは、体験しなければ意味がない。
僕は、カフェを参詣することにした。
これを書いている2006年10月の時点で、
僕は求職中の身だ。仕事を探している。
京都だなんだと優雅に言っていたのが、
まるで大昔のように感じる。
皆が汗を流して働く。
僕も社会という、新たな戦線へ赴くべく、汗を流して
職を求める。
と、これが有り得べき姿なのではないのか。
だのに銀座である。
銀ブラである。
ひどいですねえ。
さて、今回は、約100年の歴史を持つ
『カフェーパウリスタ』へ、参詣する。
銀座のカフェーというと、若輩者は気おくれして、
は、は、は、はあーと、ひざまずいてしまうような
イメージがあった。
しかし入り口は、そんないかめしい感じはしない。
勇気を出して店内に入ると、
すうっと奥が広がっているのに目が行った。
室内なのに開放感がある感じがする。
椅子が低いせいか、天井も高く感じられていいな。
いただいた資料によると、『カフェーパウリスタ』は、
創業90年。
明治42年(1909年)、初代社長が、
ブラジルはサンパウロ州政府より、サントスコーヒー豆の
継続的供与と、宣伝販売権を受けて設立されたとある。
以来、文化活動の拠点として、数多くの文化人が
常連客として名を連ねたそうな。
日本珈琲文化、喫茶店文化の草分けなのだ。
現在の店舗は、もちろん当時のものではないだろうが、
歴史は消えるものではないので、僕のカフェ参詣も、
なかなか古くて験のある場所に来たことになる。
今日飲んだのは、今月のコーヒー、『モカ ジャバ』。
かつてヨーロッパで流行したブレンドを再現したもの、らしい。
飲んでみると、
おいしくて、口から鼻に抜けるスッとした苦味がある。
不必要な酸味がないので、胃に負担がかからなくていい。
(俺は老人か)
メニューを見ていると、どうやら一押しはエスプレッソのようだ。
カプチーノを、次の機会にはぜひ飲んでみたい。
・・・・・
書きすぎた。えらそうに書きすぎた。
今回は、何だか創業90年という迫力に押された感がある。
『カフェーパウリスタ』は、
仲の良い友人とやってきて、打ち解けた多少の長話を
すると、きっと楽しい場所だろう。
何て言ったって「カフェー」だものな。
(了)