第7回:いんきなイーヨー
「クマのプーさん」のわかりにくさに、
子供には理解しにくいキャラクターが出てくる、
ということがあります。
特に、子供の頃にこの本を読んで
「この人は、いったい・・・?」
と悩んでしまったのが、
年とった灰色ロバのイーヨーです。
イーヨーは、いんきな年寄りロバで
ちょっとした嫌みとか、皮肉ばかり言います。
プーさんやコブタが、自分に会いに来てくれるのは
うれしいくせに、その喜びを素直に表現しない。
ひとことで言うと、偏屈じいさん。
その偏屈っぷりを
「イーヨーが、しっぽをなくし、
プーが、しっぽを見つけるお話」
から引用してみましょう。
お話の中で、プーが、イーヨーのしっぽがない
ということに気付く場面があります。
(ぬいぐるみが元のお話ですから、
しっぽが取れちゃったんですね)
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「だれかが、ぬすんだんじゃよ」
と、イーヨーはいいました。それから、ながいこと、
だまっていましたが、
「やつららしいやり口じゃわい。」
(略・プーさんが、イーヨーのしっぽを見つけてきます、
と宣言して)
「プーさんや、ありがとう。」と、イーヨーは
答えました。「おまえさんこそは、まことの友。
どいつこいつとは、大ちがい。」
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どうですか、このひねくれたセリフは。
まず他人を疑うことから始めてますからね。
それでもプーさんは、イーヨーの誕生日に
プレゼントをあげたり、イーヨーのために
家を建ててあげようとしたりと
心暖まるエピソードがたくさんあります。
その度にイーヨーが素直に喜ばないので、
「このじいさんは嬉しくないのかな?」
と僕はずっと首をひねっていました。
このように、「クマのプーさん」には
まるまるわかりやすく
「いい人」や「悪い人」は出てきません。
いばり屋、見栄っぱり、皮肉屋など、
どのキャラクターも(クリストファー・ロビンさえ!)
みんな少しずつ「困ったな」という部分を持って、
それでも愛すべき存在として描かれています。
それでも、仲間はずれにされたり、
嫌われたりすることはなく、それぞれが
好き勝手にやっています。
その様子がいい具合に“混とん”としていて、
面白いし、ちょっとほっとします。