第3回:プーの翻訳者・石井桃子さん
「クマのプーさん」を日本に紹介したのは、
日本における児童文学の第一人者
石井桃子さん(1907〜2008)です。
石井さんと「プー」との出会いは、1933年。
クマのプーさんの第二作目「プー横丁にたった家」の
原書「The House at Pooh Corner」でした。
それは、犬養毅の孫・犬養康彦に、西園寺 公一から
贈られたクリスマスプレゼント。
当時、知り合いとして犬養家に出入りしていた
石井さんは、その本の面白さに感銘を受け、
コツコツと日本語訳を始めます。
当時は、奇しくも日本が中国との戦争に突入しようと
していた時代でした。
石井さんは、自身の著書「幻の朱い実」に
次のように書き記しています。
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こうして日本と中国との間がいよいよ緊迫を
強めるなかで、私は、母を失い、友人を失いながら
それでも暗い電灯の下で「プー」の本二冊の翻訳を
少しずつ前進させていたのでした。
(略)
私が人間の生死と「プー」の本の与えてくれる
大きななぐさめを結びつけて考えてしまうのは
このような時代の記憶と結びついているからかも
しれません。
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石井さんはその後、日本における児童文学の
第一人者となって、「ノンちゃん雲に乗る」を
はじめとした自身の著作から、
「うさこちゃん」などの海外の作品の翻訳を
手がけます。
みなさんが小さい頃に楽しんだ児童書の中にも
石井さんが手がけられた作品がきっとあると思います。