「意味のあるアドバイスをしたい」と考えている人のために
こんにちは、ヤトミックカフェの運営者、矢透泰文です。
私は2014年に「なぜアドバイスはほとんどが無意味化するのか」というエントリーを書きました。このエントリーはおかげさまでいまだに検索にヒットし、閲覧していただいています。
しかしエントリーから約10年が経ち、ふとこのエントリーを思い返してみると「自分は未熟だったなあ」と思うことが多くなってきました。
というのが、私自身の仕事やポジションが変わったことにより、アドバイスをする立場に回る機会も多くなったからです。
そこで今回は、約10年を経た自分が、あらためて「無意味化しないアドバイスをするには」という「する」立場から見てのエントリーを書いてみたいと思います。
そもそもアドバイスは「軽い」行為
そもそもアドバイスとは何でしょうか。調べてみると、こんなことが出てきました。
『新明解国語辞典』では「私的な助言。」 となっています。 そのほかの多くの辞書でも、アドバイスは「助言」や「忠告」であるとしているように、日本語のアドバイスは、「なにかがうまくいくよう(私的に)助言・忠告すること」というのが主要な意味だと考えてよいでしょう。
(三省堂 辞書ウェブ編集部による ことばの壺)
「助言」や「忠告」を「私的に」行うのがアドバイスだ、ということですね。
アドバイスと似たような(?)行為に「フィードバック」というものがあります。フィードバックは、相手の行動に対して、望ましい行動との差異について指摘するもので、マネジメントの中では大事な行為とされています。
しかしアドバイスは「私的な助言や忠告」とあるように、フィードバックに比べると、する側も受け取る側も、どうも責任があいまいな印象を受けます。そもそもアドバイスとはそれくらいの「軽い」行為なのです。
まずこれを押さえておくべきでしょう。
アドバイスを提供する立場からの考え
ただ、アドバイスを提供する側としては、自分のアドバイスが相手に活用されて感謝されることが理想かもしれません。しかしアドバイスが前述の通り「軽い行為」である以上、そうした理想的な状態が常に実現するわけではありません。
そして私がこの年になって、最近思うこと説教臭い話なのですが、「相手が自分に対して報いてくれることを期待する」というのは、はっきり言って下品な行為なのではないか?と思うのです。
アドバイスをしたからと言って、必ずしも相手が理想的に感謝してくれたり、活用してくれたりするわけではありません。もしそうだとしても、文句を言ってはいけないのです。アドバイスなんかをするなら、それくらいの覚悟を持ってやらなくちゃ・・・。
ということを肝に銘じた上で、「やっぱりどうせアドバイスをするならちゃんとやりたい」という人に向けて、心構えについて考えてみたいと思います。
これは、10年前に「なんでもらうアドバイスがすべて役に立たないんだろう?」と思った自分へのアンサーでもあります。
1. アドバイスは信頼関係の上に成り立つ
アドバイスが「成り立つか」というのは、その内容よりも「誰からもらうのか」でほとんどが決まる、と言っても過言ではないかもしれません。
アドバイスなどという「軽い行為」ですが、アドバイスを活用する側からすると、信頼に足る人物からもらう助言の方がいいに決まっています。
だからまず心がけるべきことは「何を言うか」ではなく、「相手と自分とのあいだに信頼関係は築けているか?」と問うことでしょう。答えは出ないかもしれませんが。
もちろん、アドバイスをする側は、(相手が自分をどう思っていようとも)相手のことを真摯に考える、というのは前提にすべきでしょう。
2. 相手がアドバイスを求める理由を理解する
本当にアドバイスを活用してもらいたいのであれば、おそらく着目すべきは「何に対してアドバイスがほしいのか」という話題の対象ではなく、「アドバイスを求めている」という状況そのものに対してでしょう。
自分に置き換えてみるとわかると思うのですが「アドバイスがほしいとき」というのは、「何に困っているかもわからない」という混乱状況か、「答えはほぼ出ているが、確証が持てないから背中を押してほしい」といった状況であることが多いのではないでしょうか。
つまり、「何に対してアドバイスがほしいか」という対象が、相手の抱えている課題そのものであることは少ないと思うのです。
本当に相手の役に立ちたいと思うなら、相手が言っている「アドバイスがほしい」対象そのものではなく、なぜ相手がアドバイスを求めているのか、相手がどういう状況に置かれているのか、という背景を丁寧に探って、相手が置かれている景色を理解することが重要でしょう。
3. アドバイスの活用は受け取る側に委ねられている
再三繰り返しになりますが「アドバイスを活用するかどうかは、受け取る側が決める」ことです。
あなたがどれだけ経験豊富であったり、あなたのアドバイスがどれだけ深い洞察や含蓄を持っていたとしても、相手がその価値を認めて活かすかどうかは、相手の自由です。
自分のアドバイスに拘泥してはいけません。それが本当に相手を尊重することになると思います。逆に言うと、やはりそれくらいアドバイスは「軽い」行為だということです。
もし、本当に相手の行動を変えたいと思うなら(そしてあなたがその必要性を十分に引き受けるだけのポジションにいるのであれば)、「アドバイス」などという軽いコミットではなく、フィードバックなり、指導なり、もう少し踏み込んだ関係性を作らないといけないでしょう(もちろん相手へのリスペクトと尊重を前提で)。
あらためて「なぜアドバイスはほとんどが無意味化するのか」
9年前の自分(アドバイスをもらう側だった自分)にアンサーを返すなら、以下になります。
- 別にアドバイスが無意味化してもいいんじゃない?それを活かすかどうかは自分が決めればいいんだし!
- でも「ちゃんとしたアドバイスをもらいたい」なら、
- 信頼できる人に相談しているか
- 自分が何に困っているか、背景も含めて伝えているか
は気にしてみてもいいかもね。
- あとは、頼んでいないのにアドバイスをしてくる人とは距離を置いたほうがいいね。そういう人は、相手のためではなく、自分自身に対して報いてもらうことを優先している可能性が高いからね。
ということでしょうか。
過去の視点で書いた記事も、立場が違うとまた違って見えてくるものです。年令を重ねても、日々成長していきたいものだと思います。
UnsplashのNadir sYzYgYが撮影した写真