「モジュール化する世界」で私たちはどう生きるか

2020/05/26

こんにちは。ヤトミックカフェ運営人の矢透泰文です。

あけましておめでとうございます。2017年も宜しくお願い致します。新年ということで、とりとめのないエントリーを書きます。

さて、年末のことですが、松本人志さんの新番組がhuluとAmazonプライムのネット配信で発表されたというニュースを見まして、考えたことがあります(お笑いとはぜんぜん関係ないことなので恐縮ですが)。

「モジュール化する世界」の中で、私たちはどのように生きるのかということです。

モジュール化する世界とは

「モジュール化」とは、あらゆる製品やサービスが、統一された規格の部品(=モジュール)から構成される、ということを指します。

例えば、自動車であれば、これまで各自動車のためにいちいち固有の部品を作っていたのが、全自動車、使う部品を共通化しよう、ということです。

このように「モジュール化」とは、部品の共通化、という文脈で語られることも多いのですが、、、もっとざっくりと大まかに巨視的に捉えると、「市場プレイヤーが細かく部品化していく」といえるのではないかと思います。

これまで市場プレイヤーは、自動車産業しかり、「作って・売る」ところまでを一社でこなす、大企業に専有されてきたように思います。

もちろんその下にたくさんの「部品を供給する」プレイヤーがいたわけですけれども、大企業に囲われていたり、一つ一つは規模が小さいことで、なかなかプレイヤーとしての存在感を発揮することはできていませんでした。

しかし、大企業の作ってきた製品・サービスが、統一規格の部品(=モジュール)から成り立つのであれば、自然と「優秀なモジュール」を作ることができるプレイヤーの存在感は増してきます。

また、これまでの「大企業」が、ヒエラルキーの生態系を維持することではなく、単に仕入れたモジュールでの「組み方」のユニークさだけを求められたとき、これまでと違う戦い方を目指さざるを得なくなります。

そして、モジュールが最終的に集まるのは、その時どきに強い「プラットフォーム」。これが「モジュール化する世界」です。

2013年8月のエントリーでも書きましたように、世界はあらゆる業界がどんどん「プラットフォーム化」しています。そのために、業界構造として「モジュール化」しているともいえます。

松本人志さんの新番組が、ネット配信、という形で発表されたことは、テレビという世界にも「モジュール化」がいよいよ進行してきたことを示していると思いました。

「番組を作る」という機能がモジュール化されて切り出されていて、それらが集まるのは、もはやテレビ局というプラットフォームではなく、ネット配信サービスなのです。

「モジュール化する世界」で、私達はどう生きるか

とはいえ、こんなことはもう数年前から言われていることです。

この「モジュール化する世界(プラットフォーム化する世界)」から逃れることは、業界による時差こそあれ、大局的には不可避でしょう。

できることといえば、私達に残された選択肢について思いを馳せることであり、自分たちはどの流れに乗っていくのか、我が身をどのように処するのか、といったことを、年始につらつらと考えることだけでしょう。

私は、この世界にあって取れる選択肢は、大きく4つ、と見ました。

1.プラットフォームを作る

まず、プラットフォームそのものを作る立場を目指す選択肢。

ただし、プラットフォーム維持のためのコストと金(そして他のプラットフォームとの戦争資金)が莫大に発生するのと、まずは先行者利益がモノをいう世界であり、後発者は死に絶える恐ろしい世界であります。

誰もが目指せる道ではありません。少なくとも私には無理だと思います。南無南無。

2.優れたモジュールになる

各業界で、引く手あまたの優れたモジュールになる、という道は大きな可能性があります。ただし前提として「技術力」と「営業力」、そして「政治力」が必要と思われます。

「技術力」は、例えばITや自動車等の業界を考えればわかると思います。また、「番組を作る」というコンテンツ業界にあっても、その業界で求められるのはなんといっても「技術力」です。

「営業力」とは、その技術を組んでくれる「統合者」のところにモジュールを売り込むこと、そして「政治力」とは、その技術を業界において「規格化する」ための動きをするということです。

ただしそこまでトータルでできるプレイヤーは多くないと推察されますが・・・。

3.「統合者」になる

最終的に製品やサービスのユニークさが、モジュールの「組み方」にのみ残るのであれば、組み上げる「統合者」を目指す手もあります。
これは今までは大企業が成していた役割の一つですが、この役割もまた、一つの「モジュール」になったと言えるかもしれません。

現在のITスタートアップ系はほぼこの役割を目指して創業されることが多いのではないかと思います。創業のためのコストが、優れたモジュールを目指すよりも「相対的に」低いからです(知識とセンスは必要)。また、戦い方次第ではプラットフォーム化への道を歩むこともできます。

ちなみに前述の松本人志さんは、この「統合者」の役割を担っているのではないかと思います。

モジュールを仕入れ、「組み上げ」てプラットフォームに参入するわけですが、組まれるのは「製品」「サービス」「コンテンツ」「ビジネスモデル」など、レイヤーは様々です。

そして、一度それらを組み上げたあとは、その維持とスケールに意識を集中することになります。

4.「作家」になる

もう少し自分の手を動かす人達が「作家」です。「モジュール化する世界」にあってなお、その流れを拒否し、組み上げられる製品を構成する部品までも、自分の手で作り出すことを志向する選択肢もまた、ないではないでしょう。

「アパレル」でも「出版」でも「音楽」でも「ゲーム」でも「ラジオ」でも、どんな業界にもおそらく「作家」の入り込む余地があります。ただし他のプレイヤーと比較すると蚊の泣くような小さな小さな・・・・規模ではありますが、無事にファンを作ることができれば、安定的に買われます。

その性格上、スケールはしないので、「モジュール化する世界」にあって、この生き方がどのように発展していくのか、未知数です。

ただし、そのポジションは、(無事にファンができれば)当座はけっこう安定的だと思います。なぜなら、「人の体温」「その人ならではの味」みたいなものの価値が、上がっているからです。

まとめ

人工知能とか、ロボットとか、よく言われるように「人にしかできない仕事」の範囲は、どんどん狭まってくると思います。そろそろ本格的に、業界内にAIが配備され始め、そのことによる人員整理がされ始めるでしょう。

とかなんとかいうニュースがあると、「スキルを高めよ」とか「価値をあげよ」とか、そういった声が上がって、「俺もやべーな」とか思いながら、何にもしない、そんなことが数年続いていたと思います。

しかし、そろそろ2017年を境に、そういった「来る来る詐欺」は終わりを告げて、本格的に終わりが来ます。なぜなら、「モジュール化する世界」は今も絶賛進行中だし、不可避であるからです。

私は上の4つの生き方を挙げてみたのですが、もちろん他にあるかもしれません。しかしもし上の4つのうちのどれかを選ぶのであれば、どれも楽なものはありません。どれも達成には努力を必要とするものです。

そうです。これまでこれといった努力をしてこなかった私には、どれもお小便漏洩事故を起こしかねないほどの状況なのです。

端的に言って、「相も変わらず結構やばい状況」であることを念頭に置きつつ、「GRIT」を高めて2017年も頑張ってまいります。押忍!

-世界の片隅から(よもやま話)