自分をどうにかしたいなら、ダブルループ学習を意識してみよう

こんにちは。ヤトミックカフェ運営人の矢透泰文です。

前回、「自分をどうにかしたいなら、記録し、可視化し、認知せよ」という記事を書きました。記録し、可視化し、認知する、というのは、いわば「学習ループ」を起こすためのプロセスです。

ダイエットであれ、睡眠改善であれ、あるいは、勉強であれ、個人の中で「学習ループ」が起こり、回り始めると、自然に改善が起こってきます。

学習ループが起こると物事が改善する理由

学習ループとは、改善仮説を立てて、実際に行動してみて、起きた結果からフィードバックを受けて、改善仮説を更新する・・・という運動を指します。

学習ループが回りだすと、物事が自然に改善されていきます。なぜかというと、改善の結果が見えると、それが成功体験となり、報酬として脳に記憶され、もっとやろう、というモチベーションにつながるからです。

つまり、記録し、振り返って、行動に移す、というのは、この学習ループを回すための仕掛けになっているわけです。

では「あなた自身」を改善するには?

ただ、もっと大きな意味で「自分をどうにかする」には、この学習ループだけでは不十分です。

なぜなら「自分をどうにかする」、人生そのもの、自分という人間自身をまるごと改善するためには、自分自身を構成するOS自体のアップデートが欠かせないからです。

人間のOSのアップデートのために必要なのが「価値観や認識のアップデート」です。これまでの自分の考えや物事の見方の前提を疑い、更新していくことです。

価値観のアップデートとは?

この「価値観や認識のアップデート」を示唆するのが、成人発達理論です。成人発達理論については、2017年にこのエントリーで述べております。

2017年に読んだ本と、そのコンテクストを紹介します

大人の意識の発達モデルとしては、以下の4つの段階があるとキーガン教授は定義しています。

1.「個人主義型」(自分の目的が最優先。他人を道具化する)

2.「環境順応型」(周囲の環境・組織コンテクストに合わせる)

3.「自己主導型」(自分の意義ある目的のために、相手の協力を仰ぐ)

4.「自己変容型」(自分の目的そのものを見つめ、問い直すことができる)

自分の知性や人格の成長のベクトルとして、環境に流されることなく自分の意志を持つ、また、他者に適切に協力をあおぐ、自分だけではなく、他者の視点を持って物事を見つめたり、社会のために何かをなしていくなど、人間の器を大きくしていくためには、やはりこれまでの自分の殻を破る、という高度な成長が必要になります。

自分をどうにかするためにダブルループ学習を意識する

とはいえ、自分の経験から言っても、今までの価値観を変えていく事は容易ではありません。

この、価値観のアップデート、つまり自分が持っている前提条件自体をアップデートしていくためには、「ダブルループ学習」と呼ばれるモデルが必要になります。

ダブルループ学習とは

ダブルループ学習とは、組織学習の観点でよく引き合いに出されるモデルになります。

組織学習の観点では、すでに確立された業務モデルをいかに習熟させていくか(効率化)、という改善のモデルがあります。これは先に上げた個人の学習ループと同じ原理で、シングルループ学習と呼ばれます。

対してダブルループ学習とは、そもそもの前提条件自体を問い直して、目的を新たにセットし直すなど、高いレベルでの改善を指します。

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シングルループ学習(上)とダブルループ学習(下) Wikipediaより

シングルループを回すだけでは、前提条件そのものは問い直されません。例えば製造業でいうと、いかに早く部品をつくるか、というシングルループを回していたとしても、外部環境の変化によって、その部品そのものが不要になってしまった、ということには対応ができません。

前提条件の問い直し
行動による改善
の2つが回るのでダブルループ、というわけです。

個人レベルでダブルループを回すには

翻って、個人というレベルでこのダブルループ学習を起こすためには、この前提条件の問い直し、がポイントになります。

先に上げたエントリーで紹介された本(「なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか」)

では、この「前提条件の問い直し」を、

  • 無意識に恐れているものを可視化する
  • それを乗り越えるための行動目標をたてる
  • 他者からのフィードバックを受け続ける

ことで達成する(正確に言うと達成はなく、常に高いレベルへ成長し続ける)としています。

この方法はかなり有効であると思うと同時に、他者から常にフィードバックを受けて自身の課題に向き合うため、かなり痛みを伴う方法でもあり、もしかすると、すべての人々に当てはまる方法ではないかもしれない、とも思います。

1行日記がダブルループ学習のトリガーになるかもしれない

実は、先のエントリーにも紹介した「1行日記」は、極力、感じる痛みを少なくしつつダブルループ学習を回すための、インターフェースになり得るのではないか、と私は考えています。

1行日記は、日々の出来事の中で、自分の印象に残った出来事を記録していくものですが、1行日記の運用には、小・中・大と様々なレベルでの「振り返り」が想定されています。

まず、小振り返りは、その日に起こった出来事の振り返りです。なぜ自分はその出来事を印象的だと思ったのか、という振り返りを行います。

次に中振り返りでは、一週間に一度の振り返りを行います。小振り返りの共通点の発見や、様々な出来事に応用できる抽象的な気づきを得ます。

最後に大振り返りは、中振り返りを重ねるなかで「自分は自分の目指す方向に向かってちゃんと進んでいるか」を振り返るものです。半年から1年に一度行います。

このように、内省を継続し、振り返りのレベルを深めていくことによって、自分の価値観自体に気が付き、アップデートする(つまり、自分自身を成長させる)ための行動計画が立てられるのではないでしょうか。

まとめ

今回は「自分をどうにかする」シリーズとして、ダブルループ学習について書いてみました。

自分を成長させるためには、やはりどうしても「これまでの自分の否定」が入るため、痛みは避けられないのかな?と思いつつ、少しでも楽しく、自分を成長させるにはどうするか、ということを考えています。

ただ、ミッドライフ・クライシスに関するエントリーでも書いたように、これまでの単なるシングルループ学習では、人生に先がないような気もしていて(笑)、痛みを伴ってでも、人格を成長させなければいけないのかと、日々思案しております。

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