死蔵のエッセイ(5)|PC買い取りに投下した労力と顛末

子どもが生まれた年(2012年)にMacBook Airを買って、それから今に至るけっこう長い間、プライベートで小説を書いたり、ブログを書いたりするのに使ってきた。サイズは11インチ。
ちょっとこぶりなサイズが持ち歩きやすくて気に入っていたのだが、とうとうOSがアップデートできなくなり、挙動も重くてブラウザが動かなくなってしまって、買い替えることにした。

新しいPCが届き、データを移行してしまうと、古いMacBook Airはいらなくなったが、単に捨てるのももったいないので売ることにした。

メルカリで売ろうと思ったが、いろいろデータの初期化などに不備があると相手に迷惑をかけるので、専門店にまかせることに決めた。家の近くにゲオがあり、PCを買い取ってくれるということだったので、持ち込むことにした。初めてのPC買い取りだ。

古いPCだったので「こんなの買えませんよ」などと一蹴されたら嫌だな・・・とドキドキしていたが、ゲオの店員さんは(当たり前だが)ちゃんと対応してくれた。ホッとしたのもつかの間、店員さんは残念そうな顔をして

「OSが壊れていますね」

と言う。どうやらデータを初期化したときに、誤ってOSごと消してしまったらしい。

「OSがちゃんとしていたら、状態もきれいだし1万円以上にはなると思いますよ。ただ、こちらでは対応できないので、Apple Storeに持っていってください」

親切な店員さんに感謝しながらも(めんどくさいな・・・)と思った。しかし値段がつくというものを(しかも1万円以上と言ってくれたものを)そのまま廃棄してしまうのはもったいないので、予約してApple Storeに行くことにした。平日は時間が合わず、日曜のお昼に予約が取れた。

Apple Storeの店員さんもまた親切だった。OSをその場でオンラインインストールしてくれるという。

「この11インチのサイズは人気なんですよね。もうサポートも終わってるんですが、修理してでも使い続けたいという人は多いですよ。僕もこのサイズ好きですよ。かわいいですよね」

と店員さんが話してくれた。どうやら僕はこの古いPCを修理しながら使い続ける殊勝なユーザーとして認識されたらしい。とても「これからこれを売るんです」とは言えなかった。

無事にOSが元通りになったので、意気揚々とゲオに再び持っていくと、今度は前回と別の店員さんがPCをひと目見て

「PCにステッカーが貼ってあると、ジャンク品扱いになります。値段がついても10円くらいになっちゃいます」

と言う。がーんだ。

確かに、僕のPCにはステッカーが所狭しと貼られていた。使ってきた10数年の間にせっせと貼ってきたのだった。でもさすがに10円はひどい。「そんなこと前回は言われなかったのに」と文句を言ったが、取り合ってくれなかった。

要するにステッカーを剥がせばいいんだろ、ということで、再びPCを持ち帰ってステッカーを剥がすことにした。

調べてみると「ドライヤーを当てると簡単に剥がれる」とある。さっそくドライヤーを当ててみると、確かにそれで剥がれるものもあったが、剥がしきれない紙がべったりと残ってしまうものがほとんどだった。

さらに調べると「中性洗剤に一定時間漬けて、その後にこすって落とす」という方法があった。台所用洗剤をキッチンペーパーに染み込ませて、シールの剥がし跡に貼って5分ほど待つ。それからスポンジでこすってみると、確かに落ちた。べったりとくっついていた紙が剥がれていく。

しかし、その剥がれ方は、ズルズル・ベロベロ、というよりも、チマチマ・チクチク、といった感じで、こする労力に対して剥がれる面積があきらかに小さい。11インチの小さいサイズが、とてつもない広さに思えた。

スポンジでこすりシールと格闘すること2時間ほど、ようやくシールがすべて剥がれた状態になった。

3度目の正直で持っていくと、ようやく査定をしてもらえることになってほっとした。ここまででだいぶ時間を使っている。次に何か言われたらもう売るのは諦めようと思ったが、査定結果は1万5千円。査定金額に同意し、無事にPCを売ることができた。よかったよかった。

しかしよく考えると、このPCを売るために投下した労力に対してこの金額は果たして適正だったと考えるべきなのか、よくわからないのだった。

 

-死蔵のエッセイ