ネガティブな感情は「結果」ではなく「原因そのもの」である

こんにちは。ヤトミックカフェ運営人の矢透泰文です。

私は長年のあいだ、自分の感情について、思い違いをしていたかもしれません。ネガティブな感情を引き起こす事象について思い悩み、その事象自体を解決したい、ネガティブな感情に苦しめられないようにしたい、と考えてきました。

しかし、その考え自体が、間違いだったかもしれません。フォーカスすべきは、ネガティブな感情の発生原因ではなく、感情そのもの、だったのではないかと、そう気がついたのです。

TreeBlue
TreeBlue / Conor Lawless

感情は理不尽に湧き上がるものである

過去のエントリーで書きましたが、感情と言うのは、その発生自体をコントロールすることはできないものです。プラスのものであれ、マイナスのものであれ、理不尽に湧き上がります。

それは原始的な脳が引き起こすもので、理性よりも強いものです。おそらく、かつて、人間が生き残るために必要な生理反応だったと思われます。

しかし、現代の人間にとって、特にネガティブな感情は百害あって一利なし。頭がぼーっとするし、自信を急降下させて、妥当な思考ができなくなります。生活に影響が出ることこの上なし。

ネガティブな感情は体に悪い影響を及ぼす

年末から年始にかけて、「天才の閃きを科学的に起こす 超、思考法」という本を読みました。人生を変えるほどのアイデアがどこから生まれてくるのか、ということを説明した本です。

そのアイディアを生み出すプロセスにおいては、「オープンマインド」が重要とされていますが、「オープンマインド」を妨げる一番の弊害は、「ネガティブな感情」である、という箇所があります。

オープンマインドの3番目の障害は、もっとも克服するのが難しく、有害で、他の2つ(「過度の集中」と「注意散漫」)の障害をさらに悪化させる。 それは、「ネガティブな感情」だ。 ネガティブな感情には、不安、嫉妬、恐怖、後悔などさまざまな形態がある。こうした感情が起こると、心がそれにフォーカスしてしまうことがある。

(略)

ネガティブな感情によって脳内に分泌されるのは、(略)コルチゾールと呼ばれるホルモンだ。コルチゾールは身体に悪い影響を及ぼす。免疫システムを弱め、病気への抵抗力を低下させる。 ネガティブな感情が強くなり長く持続するほど、コルチゾールが身体に与えるダメージも増大する。また、コルチゾールは記憶をブロックする。あまりにも動揺して、何も考えられなくなったことはないだろうか。それはコルチゾールが原因だ。

つまり、ネガティブな感情、そのものが、身体に悪い影響を及ぼすものなのです。しかし、ネガティブな感情が恐ろしいのは、身体に悪い影響を及ぼすからだけではありません。

ネガティブな感情の恐ろしさ

ネガティブな感情の恐ろしいところは、正常な思考を奪ってしまうことです。

つまり、ネガティブな感情自体が悪い、ということに考えが至らず、ネガティブな感情は、何かの結果(あるいは代償)である、と考えてしまうのです。

そして、その感情の発生原因となっている要因を取り除こうとして、いろいろと「ありもしない原因」を考え始めてしまう。

「ありもしない原因」を考え始める結果、大抵、自分を責めたり、周りを責めたりと、ろくなことにならない場合が多い。

脳がでっちあげるありもしない「原因」は、往々にして「自罰的」であったり「他罰的」であったり、まったくハッピーではない。ますますネガティブな感情を強化する方向に、脳はどんどん努力をしてしまうのです。ネガティブな感情は、ネガティブな感情を強化する努力をさせるのです。

怖い!

ネガティブな感情そのものを解消するためには

「ネガティブな感情」は、眠くなったり、お腹が空いたり、といった生理現象に過ぎません。にもかかわらず、あたかもそれが起こる原因が、何か別のところにある、と考えてしまう結果、その理由として、ろくでもない考えをでっちあげてしまう、それこそがネガティブな感情の恐ろしさなのです。

ネガティブな感情を生理現象であると捉えるならば、それが過ぎ去るのをやり過ごすか、積極的に感情を変えるような「行動」をするしかありません。

気をつけたいのが、悪い感情を解消しようとして起こす行動というのは、自分を責めたり、他人を責めてみたりと、どんどん本質的ではない方向のものになってしまいがちであるということです。

本当に「ネガティブな感情」を変えるための行動とは、そうした類のものではなく、例えば、散歩をするとか、ちょっと環境を変えて気分転換をしてみるとか、そういった、少し拍子抜けするような、しかし確実にフィジカルなものです。

近年、アメリカから伝わっている「マインドフルネス」も、おそらくその方法の1つでしょう。マインドフルネスは、自然に浮かび上がってくる感情を、単に観察する、という方法をとります。そうすることで、感情に思考が支配されるのを防ぎます。

先に紹介した「天才の閃きを科学的に起こす 超、思考法」では、「フリー・ユア・マインド」というフレームワークを紹介しています。それはネガティブな感情が起きるきっかけとなる出来事について、「解決できること」「どうにもならないこと」に分解していく方法です。

いずれにしても、思考を支配しようとするネガティブな感情に執着しないことが重要です。

まとめ

ネガティブな感情とは、たぶんに生理的なもので、多くの場合、自然発生的で、生理現象に近いものです。何かのきっかけで起こりますが、きっかけと感情が、一対一でひもづいているわけでもありません(きっかけがなくなれば、感情が静まるものではない)。

人間は、自分の思考が自発的なものであると考えがちで、「何かに支配されている」とは気が付かないものです。しかし、ネガティブな感情にとらわれ、それを解消しようと「その原因」に対処しようとするとき、人は誤りを起こしています。

本当の苦しさの原因は、「ネガティブな感情を引き起こした(と脳が考える)事象」ではなく、「ネガティブな感情そのもの」なのです。

-世界の片隅から(よもやま話)