マネジメントとは「何」か?マネジメント1年生が読んだ7冊の本

こんにちは。ヤトミックカフェ運営人の矢透泰文です。

前回のエントリーからはや数ヶ月がたってしまいました。14年目を迎えているヤトミックカフェとしては更新頻度の低さは毎年の通常運行といったところです。

私はといえば、人生で初めてマネジメントという役割をいただき、慣れない人生のステージに差し掛かって大混乱していました。そもそもマネジメントって何なの?と。

そういうときは人に聞き、本を読み、そして経験から学ぶべ、というのが世の理です。今回は、大混乱にある時期の整理として、ここまでに読んだ本7冊をまとめてみました。少な〜〜。しかしどんなときも、初心者は若葉マークから。恥を忍んで書いてみましょう。

Management
Management / Matthew Wilkinson

そもそもマネジメントって何?の基礎を叩き込む本

1冊め「駆け出しマネジャーの成長論 7つの挑戦課題を「科学」する」

まず1冊目から。「そもそもマネジメントとは何か??」を初歩の初歩から教えてくれる本。です。

この本によると、マネジャーとは

「Getting things done through others」(他者を通じて物事を成し遂げること)

と定義できるそう。

マネジャーは自ら動いてはダメ!と言われますが、それは、マネジメントの本質が「他者」を通じて成果を出すことだからなのですね。

また、マネジャー初心者が苦しいのは、もともと自分で全てを片付けられるプレイヤー(実務担当者)から、人に物事を達成させるマネジャー(管理者)へと生まれ変わらないといけないから。これまで積み上げてきたものを、いったん捨てて、新しい役割を自らに課さないといけないから。

マネジャーになるプロセスとは、「〝仕事のスター〟から〝管理の初心者〟に〝生まれ変わること〟」です。
新任マネジャーは、上司と部下に挟まれながら、時にミスを犯しつつ、マネジャーに必要な知識やアイデンティティを、経験の中から学んでいくとヒルは言います。そのプロセスはドラスティック(劇的)で、まさに「生まれ変わり」というメタファで語られるにふさわしいものかもしれません。

その生まれ変わりの期間をいかに戦略的に生き抜くか、が重要だとこの本は教えてくれます。また、現代の日本社会におけるマネジャーの複雑な役割についても教えてくれます。組織の大小にかかわらず、マネジメント1年生が読んでおいて絶対に損はしない本かと。

2冊め「小さな会社ではじめて管理職になった人の教科書」

1.と同じく、マネジメントとはそもそも何か?について基本を教えてくれる本です。

「管理職としての基礎感覚を身に付けてもらうためにつくった本」と書かれている通り、マネジャーが最低限、腹落ちさせておかないといけない原則が、平易な言葉で書かれています。

それでいて、しばらくマネジャーで現場で悩んでいる心には「ハッ」と響くものばかりで、大変参考になります。

管理職は実務のフィールドで、自らはゴールテープを切りません。走らせた部下に切らせます。「管理職とは人を通じてことをなす」を基本としてください。
(略)
人を通じて事を為す喜び。事を為した人の成長を喜ぶこと。管理職の喜びはそこにあります。

今の私には「第3章 管理職とはチームの仕事をマネジメントするのが仕事」がずしんと来ました。見出しだけを読んでもこんな感じです。

  • 部下に、何を、どのタイミングで、どのように報告させるかが大切
  • 会社の利益構造の理解が仕事の的を射抜く
  • 発生した問題を解決する人より、問題を発見して、先に手を受ける人になる
  • 課題の設定を問題の安易な対症療法的にするとゼッタイに行き詰まる
  • 上位目標・方針との連鎖がないと、実行後に悲劇が待っている

ぐへー。できていないことばかり・・・。

3冊め「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」

インテルの元CEOにして伝説の経営者、アンディ・グローブの名著。

言わずと知れたベストセラーなので、読んだ人も多いかと思いますが、私も読みました(そしてこれからも読んでいくことになるでしょう・・・)

決して難しい本ではなく、むしろ「こんな俺に理解できていいのか・・・」というくらいに読みやすい本です。ただ、そこに書かれている内容は深い。経験と知識に裏打ちされた実践知の数々です。

ここでも、マネジメントの定義がなされます。

マネジャーのアウトプット

=自分の組織のアウトプット+自分の影響力が及ぶ隣接諸組織のアウトプット

マネジャーは多くのボールを同時に空中に上げておき、自分の部門のアウトプットを最高に上げると思われる活動に自分のエネルギーと注意を注がなければならない。いいかえれば、自分の“テコ作用”が最大となりそうな点に移るべきなのである。

マネジメント1年生は、ぜひ私と一緒に上記の定義を頭に叩き込みましょう。自分で動くのではなく、人に動いてもらうこと。自分の働きを最小限に、成果を最大限に。それがマネジメントなのだと・・・。

マネジャーの具体的な立ち回りを学ぶ本

4冊め「フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術」

「駆け出しマネジャーの成長論」と同じ著者による本です。

マネジャーの重要な仕事の一つに「部下育成」がありますが、その方法・手法である「フィードバック」を、その具体的な手順・プロセスに至るまで、実践的に紹介した本です。

昨今、日本では、部下の教育の手法として「コーチング」(教えず気づかせる)が流行ったことによって、「言うべきことをしっかり言うこと」がおざなりになってしまったと著者は指摘しています。これは「コーチング」という手法が悪いわけではなく、「言いたいことを言ってはいけない」という偏った理解が問題なのであると。

フィードバックとは「耳の痛いことを部下にしっかりと伝え、彼らの成長を立て直すこと」。

フィードバックは、人それぞれの行動のクセ、認識の偏りがあるなかで、まっすぐに進むためのロケットの軌道修正に例えられます。その大切な仕事から、管理職は逃げてはいけないと、この本では繰り返し語られます。

本来、フィードバックは上司と部下の一対一で、密室で行われるため、そのプロセスや実践知はなかなかオープンにされず、学習しにくいのですが、この本は、それを徹底的に暴きます。このレベルで「フィードバック」についてしっかりと教えてくれる本は、おそらくこの本以外にないと思います。

この本を読んでおくのとおかないのとでは、実際にフィードバックの必要性に迫られたとき、大きな違いが出ると思います。中でも、腹にドスンとくるのが、この一文です。

また、この段階になったら、大切なことが一つあります。
腹をくくってください。
相手から逃げないでください。
しっかりと相手に向き合ってください。

もちろん、良いフィードバックを送るためには、当然良いフィードバックの「受け手」になる必要もあり、管理職自身もフィードバックを受けることの重要性も書かれています。必読!

5冊め「ダークサイド・スキル」

マネジメントはもちろんきれいごとだけではなく(むしろきれいごとだけで進むことが少ない)職種でもあるようです。この本を読むと、「それこそがマネジメントの本質だろ?」と言われているようです・・・。

この本は、どちらかと言うと大企業におけるマネジャー(中間管理職)を想定された本ですが、書かれている内容は、組織規模にかかわらず参考になります。というか、身も蓋もないことを明け透けに書いてくれている本という印象です。

先に書いたとおりマネジャーは、「人を通じて事を為す」職種であるわけですが、組織という「人間の集まり」の中においては、部下、上司、社長など、様々な力関係・利害関係・コミュニケーション経路・組織経路が絡み合っています。

人を動かすために人間を相手にすることには、ある種の生々しいコミュニケーションスキルが必要になります。それができていない人は、成果を上げることができない。

つまり、マネジャーはそういった「泥臭いスキル」も持たねばならず、そこに焦点を当てて語られた本なのです。

ここで語られるのは、

  • 前向きなCND(調整・根回し・段取り)
  • 情報の非対称性を逆手に取って上司を操る
  • あえて空気を読まない
  • 独自の人脈を作って社内諜報戦を勝ち抜く
  • 堂々と嫌われろ(意思決定の重要さ)
  • 自身の価値観を知り、それに忠実であること

といったことです。

マネジメント1年生の私が現在、特に痛感しているのが「意思決定」の重要性。

自分の信念を貫いて、踏み絵を拒むのも決断なら、自分の信念を曲げてでも、ここは歯を食いしばって踏んでおくべきだと言うのも、ある意味、決断だ。ところが、とにかくリスクを回避しようと言う人は、踏み絵そのものを見なかったことにする。
(略)
負けないように、失敗しないように行動するのは、サッカーで言えば全員で引いて守っている状態で、確かに点は取られないかもしれないが、自分たちも点を取ることができない。リーダーには、ときにはリスクを取って攻めていかなければいけない局面があり、そこでリスクを取れるかどうかというのも、別の意味での踏み絵である。

これもまた、できていないことの一つだな・・・。

6冊め「1分間マネジャーの時間管理」

また、別の角度から、ユニークな本をご紹介します。。

マネジャー自身が陥りがちな課題として、マネジャー自身がタスクで手一杯になってしまいがち、ということが挙げられます。いっぽう、部下を見ると、なんだか手持ち無沙汰・・・。

なんで俺ばかりが忙しくなってるの??というとき、ないですか?それは実は「本来の部下の仕事を引き取ってしまっているのです。

本書では、そんな「本来持つべきではないタスク」を“サル”というメタファーで表現しています。

僕は今、社内を移動しているとしよう。途中、廊下で部下とすれ違い、話しかけられる。
「おはようございます、課長。ちょっと、いいですか。じつは現場で問題が起きまして・・・」。
(略)
部下の話を聞くかぎり、指示を出す必要があることは分かったが、どう指示していいのかはまだ分からない。そこで僕は「(略)少し考えさせてくれないか」と一応の返事をする。
(略)
ふたりのあいだに何が起きたのかは一目瞭然だ。(略)立ち話が始まるまで、サルは部下の肩に乗っていた。(略)そして僕が「少し考えさせてくれないか」と言った瞬間に、(略)サルが僕の肩に完全に乗り移った
(略)
部下は(略)僕のオフィスを一日に何度ものぞいて「こんにちは。例の件、どうなりました?」と聞くわけだ。(略)本来は部下の仕事なのにね

マネジャーは、マネジメントの仕事に集中するべきで、部下のサルを引き受けるべきではないのです。サルは、本来の持ち主のもとで適切に管理されるべき!

この本では、ユーモラスな表現で、「サル」の引き渡し方を伝授してくれます。

  1. サル(次の対応)の特定
  2. サルの世話係を決める
  3. サルの保険(万一のリスクに備える)
  4. サルの定期検診(進捗報告会のの日時を決める)

マネジャーの仕事とは、部下に適切にサルの面倒を見させること。まさに「本来やるべきではない仕事をうまくやる価値はない」のです。

そもそも俺、マネジメントなんか向いてないんだけど・・。と思ったときに読む本

7冊め「なぜ、あなたがリーダーなのか?」

そもそもマネジメントが最初から上手くできる人、最初から向いている人はいません。これについては、ここまでに紹介してきた本にも書かれているので、おそらく間違いないでしょう。

なので、「俺、そもそもマネジメントなんか向いてないんだよ・・・」という人は、安心して一緒に精進しましょう。

とはいえ、「良いリーダー」というのは確かにあるものです。良いリーダーと悪いリーダーとの間には、そこにあるチームの成果によって如実に差が出ます。

では「良いリーダー」とは何なの?に迫ったのがこの本です。

この本では、リーダーシップを、リーダー自身の性格などの「個性」に還元するのではなく、「他人とともに物事を成し遂げるための何か」と捉えています。つまり、人ではなく、他人との関係性をどう作るか、というところに求めているのです。

この本で述べられている優れたリーダーシップの原理原則が、以下の3つです。

  1. リーダーシップは状況に左右される
    状況が変われば、求められるスタイルは変化する(例えば、戦争時の強圧型から、平和時の協調型へ)。その変化の兆しを見逃さず、リーダーシップのスタイルを変化させていくこと。

  2. リーダーシップは肩書を問わない
    リーダーは組織内の序列とは関係しない。優れた組織では、リーダーがいたるところに存在している。自分も今からリーダーシップを持って行動することができる。

  3. リーダーシップは関係性に根ざす
    リーダーシップは周りの人々の間に形作られる関係性に根ざす。つまり、継続的なメンテナンスを必要とする。

上記のようなリーダーシップの原則がある中で、リーダーはどのように自身のスタイルを築いていけばいいのか。そのためには何より「本物」であることが重要だと、この本には書かれています。

「本物」と訳されていますが、原文ではオーセンティシティ(authenticity)という言葉が当てられています。辞書で引くと「信ぴょう性」とか「確実」、といった言葉が当てられています。揺らぎなく、信用できるもの、といった意味でしょうか・・・。

本書では「authenticity」の要素として、以下の3つを挙げています。

  1. 発言と行動が一致していること

    自ら口にしたことは実行する、人に説いたことは実践するリーダーを、周りは「本物」と認める。

  2. 常に首尾一貫していること。

    異なるタイミングで、異なる相手に対し、異なる役割を演じる必要性に迫られたとしても、「根底に流れるものは変わらず同じである」と周りに感じさせ続けなければならない

  3. 自分らしくあること。

    簡単ではない。ただし、この「自分らしさ」こそが、首尾一貫性を醸し出す上での礎でもあるのだ

以下、本書では「自分らしくあること」の困難さと、その困難さを乗り越えてでも「自分らしく」いることの重要性が、過去のリーダーのエピソードとともに、繰り返し語られます。

抽象的でわかりにくい箇所もありますが、いかにリーダーがそれぞれの「本物らしさ」を醸し出しているかのエピソードも面白いので、どんどん読めると思います。

まとめ

私は今までのキャリアの中で、組織の特性からか、「マネジメント」された経験がなく、マネジャーのロールモデルがありませんでした。今回、マネジャー職を拝命するにあたって、「そもそも何なの・・・」というところから、学ばなくてはいけませんでした。

そんな私に、わずかながらでも「マネジメントってこういうもの」というとっかかりを、上の7冊は与えてくれたように思います。

今回は、前回のエントリーまでにインプットした内容を自分なりのアウトプットにすることで、整理してみたのですが、マネジメントはある種の知識体系でもありますから、これから学ぶことはまだまだあります。

また一方で、本なんかいくら読んだって、マネジメントができるようになるわけないだろ!という批判もあるかと思います。確かに、マネジャーは現場での経験、ときには失敗から、多くを学ぶのだと思います。(現に毎日が反省ですし・・・)

これから極力、私の恥ずかしい失敗と、そこから得られた教訓について、共有できる範囲でエントリーで共有したいと思います。マネジメント初心者の皆さん、一緒に精進しましょう。

-世界の片隅から(よもやま話)