確かにラジオのちからはある!〜映画「ガレキとラジオ」〜

ヤトミックカフェ運営人の矢透泰文です。

ゴールデンウィークは、前半に映画「ガレキとラジオ」を観てきました。永六輔さんのラジオ番組「土曜ワイド」で紹介されていたのを聴いて知りました。

ガレキとラジオ バナー

「ガレキとラジオ」とは

「ガレキとラジオ」は宮城県南三陸町の臨時災害放送局「FMみなさん」の約1年に渡る奮闘を描くドキュメンタリーです。

防災無線の代わりとして開局された「FMみなさん」。スタッフは9名ですが、元ダンプの運転手や、劇団員、高校を卒業したばかりの若者など、いずれも町の臨時職員として雇用されたラジオの素人ばかり。

「ラジオの素人」の印象的なシーンとして描かれるのは、女優・夏木マリさんへの電話インタビューをどのように流すかの工夫。携帯電話を大きめのビンの上に乗せて(!)、スピーカーから出された声をマイクで拾うというなんとも原始的な方法です。また、機械の操作を誤って音声が流れないという失敗も描かれています。

津波で大きな被害を受けた南三陸町。「FMみなさん」のスタッフである9人も、同じく被災者です。家族を亡くした方もいます。そして家を流され仮設住宅に住んでいます。ラジオの素人、しかも自らも被災者である自分自身が、ラジオを通して町のために何ができるのだろうか・・・?スタッフの9人は悩みながら、試行錯誤を続けます。そして、その放送技術も少しずつ向上していくのです!初めての生放送のシーンは、じーんと感動しますが、そこで得た技術を使ってさらにクライマックスのイベントに挑む展開は胸熱!!スタッフの皆さんが、ラジオの放送にがっぷりと取り組み、奮闘する姿が、胸を打ちます。

ラジオのちから

映画は、クライマックスである「出発式」の企画・開催に向けて進んでいきます。震災のために結婚式を挙げられなかったカップル、また写真を流されてしまった人のために、新たに写真を撮影してプレゼントする、というイベントです。

素人だった9人の「ラジオだからできることがあるんじゃないか」という想いから始まったこのイベントは、町の人口8,000人に対して、なんと1,000人が参加する大きな催しとなり、復興への思いをしっかりと形にする第一歩になります。

ラジオ、そしてコミュニティFMに興味を持つ私としては、映画の1シーン1シーン全てに釘付けでした。震災のあと、ますますラジオが好きになった私です。この映画を見て、やはりラジオには他のメディアとはちがうちからがあると確信しました。

それはベタな表現を使えば「聴く人を勇気づけるちから」であり、恥ずかしげもなく言えば「リスナーを結びつけるちから」です。ラジオには不思議とそうしたちからがあるのです。

そしてコミュニティFMの場合は、そこに「コミュニティを盛り上げる」という役割が加わります。地域メディアとしても、ラジオは大いにちからを発揮すると思うのです。

臨時災害放送局は、自治体が主体となって「臨時・一時的に」開局する放送局ですが、コミュニティFM局として新たに開局を目指すところもあるようです。もし興味がある方は、インターネットから東北の臨時災害放送局の放送を聴くこともできます(すべての放送局ではありません)。



http://www.simulradio.jp/サイマルラジオ
全国のコミュニティFM放送(一部)をインターネットから聴くことができます。

まだまだ現実はつづく 

けれど、この映画はただ「感動作」の一言で片付けてしまうことは許されないでしょう。映画の後も、当然ながら現実は続いています。

町の臨時職員である「FMみなさん」のスタッフに支払われるのは、時給は850円。家族を養うには十分とはいえません。さらに町の財政難のため、10ヶ月で閉局を余儀なくされています(放送は隣町の登米にある「H@!FM」に委託され、臨時災害放送局としては2013年3月31日に閉局したとのことです。こちらのブログで知りました)。映画に出てくるスタッフの皆さんの閉局後の進路は決まっていません。被災地の現実は現在進行形で、厳しい財政や、雇用の問題は解決していないのです。

この映画を観て勇気や感動ををもらったら、あの映画に出てきた人たちをすぐに忘れることはできないでしょう。私としては、大好きなラジオ、コミュニティFMの放送を聴き続けることで、被災地への関心を持ち続けようと思います。

ちなみに、映画の収益は、復興のために一部使われるそうです。そろそろ上映が終わりかけのようなので、お急ぎくださいませ!

-ラジオの話, 世界の片隅から(よもやま話)