やってみなくちゃわからない。ただしやりたくないことはやらなくてもわかる|「好きなようにしてください」を読んで

2016/05/09

こんにちは。ヤトミックカフェ運営人の矢透泰文です。

新年度が始まり、にわかに活気づく季節になりました。この季節は新年に続いて、新しいことを始めるにはちょうどよい時期ですね。

とはいえ、就職活動を控えていたり、転職を考えていたりと、進路やキャリアの岐路にある人にとっては、ワクワクする事ばかりでなく、不安なことも多いかと思います。

進路の岐路にあるときは不安なものです。就職活動や転職活動のときは私もそうだったので、少なからず共感いたします。

そんな人たちにピッタリの本があります。楠木建さんの著書「好きなようにしてください」です。

好きなようにしてください
ダイヤモンド社 (2016-02-08)
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今回はこの本を紹介しながら、エントリータイトルでもあるように「やってみないとわからない。ただしやりたくないことはやらなくてもわかる」ということをお伝えしたいと思います。

「好きなようにしてください」とは

僕の大好きな本「ストーリーとしての競争戦略」の著者・楠木建さんの著書です。(「ストーリーとしての競争戦略」についてはこちらのエントリーに書きました)

楠木建さんの専門は経営戦略なのですが、著書で展開される「経営とは総合芸術」とか「戦略はストーリーである」とか、書かれる内容はわかりやすく、いちいちうなずいて読んでしまいます。ストーンと私の腑に落ちます。

この本の元になったのは、ニュースメディア「NEWS PICKS」に連載された人生相談です。出されている相談は

  • 大企業に行くべきか、スタートアップに行くべきか。
  • 大学をやめて起業したいがどう思うか?
  • 海外の大学に行くべきかどうか?
  • このまま今の仕事を続けていて良いのか?

などなど。さすがNEWS PICKS。意識の高い相談ばかりだなあ・・・と鼻水をすすりながら感心していると、楠木さんの回答もスパークしていて度肝を抜かれます。なんと相談に対して「好きなようにしてください」の一言でズバズバと斬っていくのです!それが非常に痛快です。

本書の面白さは、「好きにしてください」と回答したあとにつづく「余談ですが・・・」にあります。そこには楠木先生の仕事観・進路観・人生観がこれでもかと展開されており、いま進路の岐路にある人、そうでない人にも、参考になるところが多いと思います。

楠木先生の仕事・進路観とは

それにしてもなぜ楠木先生は、相談に対して「好きなようにしてください」と答えるのでしょうか?それは以下のような哲学に裏打ちされています。

そもそも僕は、世の中にある環境のほとんどは「行ってこいでチャラ」だと思っています。環境として、大企業にはいい所と悪い所があるでしょうし、スタートアップにもいい所と悪い所がある。人間の世の中はわりとうまくできているものです。一方的にいい話なんてどこにもない。物事には必ずプラスとマイナスがあります。「いや、本当にいい所もあるんだよ」と言う人もいます。ま、探しまくればそういう「環境」が世の中のどこかにあるのかもしれません(僕はこの年まで実際にこの目で見たことはありませんが)。しかし、それでも「行ってこいでチャラ」という前提を持って生きているほうがいい。

(「好きなようにしてください」)

行って来いでチャラ。つまり、良いところもあれば悪いところもある、という点でどちらを選んでも本質的には変わらない。むしろ自分がそこで何を求め、何をするのかが大事であると。

うーむ。本当にそうですね。

私自身、就職して今年で12年になりました。若輩者とも言ってられない年齢になってきました。とはいえ、実力はまだまだ。情けないですが、若さにも、経験にも甘えられない中途半端な年齢となりました。おまけにこれまでやってきたことが、能力や人間力、さらには表情とか外見とか、そういうところに如実に出てきます。冷や汗が出ますね。

それはさておき、これまでなんとか12年働いてきて、転職も何度か経験しましたが、楠木先生の言葉は大変納得できます。実際、事前にあれこれ考えたことよりも、結局、そこでやってみて、結果としてわかったことから、自分の考えを固めて、また新たな環境を求めて・・・そうすることによって、私は自分のキャリアを作ってきました。

あれこれ考える前に、やってみる。問題は何を選ぶかではなく、そこで何をするか。本当にそのとおりです。

今やりたくないことは10年後もやりたくないもの

やってみなくちゃわからない、という大原則はありながらも、もう一つ、僕が実感したことがあります。それは「やりたくないことはやらなくてもわかる」ということです。

やりたくないことはしないほうが良い」というエントリーの中でも書いたことですが、人間は、どうしてもやりたくないことはつづけられないように出来ています。やりたくないことを無理にやり続けていると病気になります。

進路やキャリアを決めるとき、何か「自分の好きなことをやれ」と言われますが、好きなことがわからず困る、という場面はよくあります。特に、社会に出て働いたことのない人は、経験の引き出しが少ないため、「自分の好きなこと」といっても特に困ると思います。

それは悪いことではないですし、無理もないことです。僕もそうでした。いろいろな人と出会って、ささやかながら仕事で人の役に立つ、という経験を少しずつ重ねることで、「あれ?ひょっとして自分はこういうことが好きなんじゃね?」という経験のサンプルが脳に溜まってくるのです。

ですから、例えばいま就職活動を控えて、自分が好きなことがわからずに困っている人は「どうしても自分はこれをやりたくない。無理にやっていると病気になってしまう!」ということだけを避けて、それ以外は大体やってみる、というスタンスを取るのはどうでしょうか。

人生行って来いでチャラ。ある程度、どんな道を選んでも同じなのであれば、心の赴くままにいきたいものです。お互いに頑張りましょう。「好きなようにしてください」もぜひ読んでみてください。

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