「レイヤー化する世界」とラジオの未来を考えるのココロ
いらっしゃいませ。ヤトミックカフェ運営人の矢透泰文です。
「ラジオはもうダメなメディアなんだろうか?」というエントリーが少しずつアクセスを伸ばしているので、その続き(というのか?)書きたいと思います。
佐々木俊尚さんの「レイヤー化する世界」と、ラジオについてです。
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「レイヤー化する世界」とは何か
「レイヤー化する世界」では、国家や民族といった単位で世界が区切られていた時代は終わりつつあり、あらたに「場」という区切りが立ち現れてくると述べられています。
「場」とは、巨大企業が提供するプラットフォームのようなものです。例えば音楽であれば、アップル社が提供する「iTunes」が「場」に当たります。世界中の、音楽を作る人、売る人、買う人が、国を超えて「場」の上で、同じ条件で立居振舞うことを余儀なくされる世界です。
購入した楽曲や番組を、テレビや音楽プレーヤーやスマートフォンやパソコンで楽しむという機器のレイヤー。 そして楽曲や番組そのものというコンテンツのレイヤー。 どのレコード会社の作った楽曲なのか、どの放送局のつくった番組なのかという縦の切り分けは、この〈場〉の世界では意味を持ちません。どんな楽曲だろうが、どんな番組だろうが、全部ガラガラポンとこのなかに運び込まれて、それがさまざまなレイヤーを経由して、皆さんの手もとに運ばれる。
確かに、実感として私たちはすでに様々な「場」の上で暮らし始めているのを実感しています。国境はバキバキとなぎ払われ、世界が迫っております。
そうすると、ラジオというメディアにもやはり、遅かれ早かれ「場」に呑み込まれるのは確実だと思うわけです。
ラジオもすでに「場」に呑み込まれつつある。
遅かれ早かれ、と書きながら、すでにアメリカなどでは、ラジオの主戦場はインターネットラジオに移りつつあるようです。
そこではいくつかのプラットフォーム候補がしのぎをけずっています。前のエントリーでは、今後、ラジオは収益モデルを確立できるかが鍵、と書きましたが、その収益モデルも結論が出始めています。
すなわち、会員制の「音楽聴き放題サービス」などをサブスクリプション型か(Pandoraなど)、インターネットでサイマル放送を行い、プラットフォーム上の広告収入を得るか(TuneInなど)、です。その方式に生き残りの道を模索しているようです。
ラジオの「役割」をどう守るか
「場」に呑み込まれるのは避けられない流れとしても、一点問題だと思うのは、ラジオの隠れた「役割」、つまり「いざというときの情報収集メディアであること」をどう守るか、ということです。
仮にラジオが主戦場をインターネットに移したとしても、
- スイッチをひねれば情報が収集できる(電波による放送である)
- 地域に密着した情報が提供できる
という利点が失われるのは困ります。特に、災害大国である日本では。
けれども、この「ラジオが守るべき役割」は、おそらく収益を出すためには邪魔でさえあるでしょう。電波による放送を行うことは、機器の維持管理でどんどん金を喰うのです。
ラジオは、新しい「場」=プラットフォームに乗っかって、メディアとして進化する道と、従来の「電波放送」という両方を維持しなければいけない。すると、ラジオはこの後、
- インターネットラジオを主体とするプラットフォームに参加する
- 組織としてはスリム化する(コミュニティ放送化する)
- 運営には自治体など、パブリックな資金が参加する(いざというときの災害放送という公益性の高いメディアであるため)
という流れになってくるかも・・・と、私は思います。この件は引き続き考察していきたいと思っております。
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