読書感想文を真面目にハックしてみる
こんにちは、ヤトミックカフェの運営者、矢透泰文です。
以前「考えていないことを言語化するには」というエントリーを書きました。
読書感想文の一番の敵とは「何も思わない」ということなのではないか?、という思いから書いたのですが、考えてみると読書感想文ってなんだか不思議な宿題だなあと思っていました。本当に読書感想文は、「感想」を書くものなんだろうか?と。
今年も夏休みの宿題として、読書感想文に取り組んでいる人も多いと思います。そこで、常々私が思っていた「読書感想文の書き方」についてのエントリーを書いてみたいと思います。
今回の記事はちょっとシニカルな視点で書いているので、あくまでひとつの仮説だと思って読んでください。そしてもし使えるようでしたら使ってみてください。
読書感想文ってそもそもなに?
読書感想文はなぜ毎年宿題になるのか?というコラム記事によると
なぜ読書感想文というものが当たり前のように毎年組み込まれているのでしょうか。
(略)
国語の学習指導要領には常に読書という目標があり、それに沿う形にするために読書感想文というカリキュラムを入れているだろうことが予想されるのです。
とあります。
各学年の国語指導の下敷きに「読書をさせる」という目標があり、それを達成させるための手段が読書感想文なのでは、というのです。
つまり、読書感想文という宿題は「読書」と「作文」を一石二鳥で行える、ある種「効率のいい」ものであり、その効率の良さから、毎年のように長期休みの際に宿題として選ばれているのではないでしょうか。
読書感想文とは誰のためのものか
上のような推察からすると、読書感想文の読者は「先生」であると言えます。つまり、突き詰めると読書感想文とは先生に向けて書くものであり、ここから出される結論は、「読書感想文には、先生が知りたいことを書く必要がある」ということです。
おそらく先生が知りたいのは、「あなたが読書から何をどれだけ学んだか」ではないでしょうか。あえて言ってしまうならば、読書感想文と名がついていますけれども、書くべきものは「何を思ったかという感想」でなくてもいいのです。
先生に向けた読書感想文の書き方
という仮説をもとに、「読書感想文にはつまるところ何を書けばいいのか?」をまとめました。本を選ぶとき、読むときに、作文を書くときに、ぜひ参考にしてみてください。
以下のポイントを書き出しておくことで、ぐっと「先生が喜ぶ」作文が書きやすくなるでしょう。
1. なぜこの本を選んだか
なぜこの本を選んだのか?という理由は大事です。作文全体に「必然性」が生まれるからです。
学校によっては「読書感想文のためのおすすめ本リスト」があって、そこからなんとなく選んだだけだよ〜という人もいると思いますが、なんとかひねり出してもいいので、理由を書きましょう。
物語が好きだったから、とか、表紙が気になったから、とか、読みやすそうだったから、でもいいでしょう。大事なのは理由があることです。
2. 得られた学びを書く
先生はほしがりなので、「単に読書をした」という事実だけでなく、「読書によって学びがあった」という事実を示すと喜ぶと考えられます。
ということで、「学びがあった」という事実を埋めていきましょう。全部を埋めなくてもいいので、下のリストを活用して、描けそうなところからいくつかポイントを書きだしてみましょう。
- 読んでみて面白かった?つまらなかった?その理由は?
- スラスラ読めた?読むのに苦労した?その理由は?
- 面白かったところは?(シーンや文章なんでもOK)
- 読んで「へえ」と思ったところは?新たに知ったことはある?
- (物語の場合)主人公や登場人物に対して、「すごい」と思ったり「わかるなあ」と思ったりしたところはあった?
- (物語の場合)もし自分が登場人物だったら、どう行動したと思う?
- この本のタイトルや表紙はなぜこんな風になっていると思う?
- (挿絵がある場合)絵やイラストはどうだった?内容に合っていた?
- この本を友達にすすめるとしたら、どんなところを伝える?
- 同じ作者の他の作品を読んでみたいと思った?その理由は?
3. 読書前と後の変化を書く
読書によってあなたがどう変わったか?という変化の記述は、「学び」を示す最たるものなので、ぜひ書きましょう。
変化を書くために使えそうな観点を置いておきますね。
- 本の印象の変化
- →読む前はつまらなさそうだな、と思ったけど、読んだらハラハラドキドキした など
- 自分の考えの変化
- → この本を読んで、これまで◯◯だと思っていたけど、△△だと思うようになった など
- 気づきや興味の変化
- → この本を読んで、◯◯に興味が出てきた
読書感想文の構成を考える
読書感想文は「先生」に向けて書くもの、と考えると、先生が読みやすい構成にしておくのが良さそうですね。上のポイントを書き終えたら、作文にまとめてみましょう。
よく、読書感想文をあらすじで埋めてしまう、というのを聞きますが、先生が知りたいのはあらすじではないので、分量は減らしてしまっても大丈夫でしょう。
読書感想文の規定枚数は小学生〜中学生〜高校生と多くなっていくので、「書くことがない!文字数が足りない!」という場合に、調整弁としてあらすじを書く、という手があります。
読書感想文の構成のヒント
- なぜこの本を選んだのかを書く
- この本で得られた学びを書く(事前に書き出したポイントから選んで書く)
- 読書前後の変化を書く(2.と入れ替えても良い)
読書感想文は「やっつけ」にするには勿体ないかも
本来、読書は個人的な営みであり、ふだんはその感想を他人に開くことはありません。
なので、ふだんから本を読む人は「感想を伝える」ことにストレスを感じるかもしれませんし、本を読まない人は、「本を読む」「感想を書く」ということそのものにストレスを感じるでしょう。
事程左様に「読書感想文」という宿題は、読書という行為からすると不自然な行為であり、このことから、読書感想文で求められているのは「単なる感想」ではなく「読む人を想像して伝える、ライティング技術」なのでは?と考えた次第です。
とはいえ、読むことも、書くことも、真摯に向かい合おうとすると骨が折れることです。なので、テクニックだけで乗り切ろうとすると、逆に大変になってしまうかもしれません。
なので、素朴でもいい、簡単でもいい、上手く書かなくてもいいので、リストを埋めて作文を書いてみる、ということが一番の近道かもしれません。
そしてもし心の余裕があるのであれば、読書感想文という機会を逆にハックして、本に向かい合ったり、面白さを人に共有したり、作文を練習したり、そんな機会になるといいのかな〜と思います。
UnsplashのJosh Applegateが撮影した写真