ラジオはもう「ダメ」なメディアなんだろうか?
こんにちは。やトミックカフェ運営人の矢透泰文です。
いつも拝読しているラジオブログでこんな記事を読みまして、いや〜確かにラジオ界はキビシイものだなあ〜と思いました。
赤字の文化放送に税金投入あり? AMラジオの急がれる経営再建(週刊実話、2013年6月27日 特大号)
それを読んで、ふっと思うところがありましたので書き殴りたいと思います。ラジオ、メディアについて。宇宙、日本、世田谷。
メディアの価値を測るものが「広告枠としての価値」で良いか?
ラジオを始め、マスメディアの収入の多くは広告収入です。ところが近年、ラジオは広告を配信する枠としての価値が下がっているとされ収益も減っているようです。広告の収益がインターネットに抜かれた、と話題になっていた数年前が懐かしく思えるほど、メディアの表舞台から姿を消しつつあるなあ〜という印象です。
現に、前述の記事のように赤字になってしまう局も出ていますし、関西では老舗のFM局、FMCOCOLOがFM802に買収されるなど、なかなか景気のいい話は聞こえてきません。
けれど「広告発信枠としての価値が下がっている」からといってラジオを「ダメ」なものとして捉えるのは、私は反対です。その見方はあまりに一面的で浅薄すぎやしないでしょうか。
メディアは「有用性」だけで考えられない
現在、企業の価値を決めるのは企業主導で発信する広告やブランディングではなく、顧客自身だと言われています。顧客の声が影響力を持ち、いかに「愛されるか」が企業の価値を決める時代です。
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そんな時代にあって、従来の広告収益モデルでメディアを評価するのは無理があると言ってよいでしょう。「広告を出しただけでは売れない」「単に多くの人に届けるだけでは意味がない」時代なのですから。
メディアの評価軸を「視聴率」「聴取率」で捉えるのをそろそろやめるべきです。見方を変えれば、ラジオは多様化するメディアの中にあってもかなり独自のポジションを持っていると思います。
ラジオには、送り手と受けての距離が近く、受け手(リスナー)同士の連帯が強い、という特長があります。もちろん、それを生み出すのは優秀なパーソナリティと番組ですが。それはラジオの強みだし、メディアとしてのポテンシャルだと思います。
ラジオは「ミドルメディア」になる
とはいえ、やはりラジオも収益構造の変化からは逃れられません。ですから、今後も今と同じようなマスメディア、大きな企業という形での存続は難しいと思います。けれど「ラジオ」というメディア自体はなくならないし、これからますます存在感を強めるのではないかとさえ思っています。
これはコミュニティFMに関する本を書かれた紺野 望さんから伺ったお話ですが、ラジオはこれから「マスメディア」ではなく「ミドルメディア」になるといいます。何十万、何百万といった大多数を相手にするのではなく、限定された狭い地域に対して放送を行うメディアになる、と。そこにこそラジオの強みが活かされるというのです。
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すでに、限定された地域に対しての放送ということでは、コミュニティFMというメディアがあります(映画「ガレキとラジオ」もコミュニティFMが舞台でした)。
コミュニティFMの価値は広告発信枠ではなく、コミュニティを作り育てる、というところにあります。ですから、いまビンビンきている「地域活性化」というキーワードとものすごく近しい関係にあると、私は思っております。
ラジオの今後の課題
しかしながら、コミュニティFMの問題としては確立された収益モデルがないことです。従来の広告収益モデルでは、コミュニティFMは残念ながら「あまり価値がない」とみなされてしまいます。せっかく開局したコミュニティFMも、財政難で閉局したところもあります。
ラジオに限った話ではないのでしょうが、メディアの今後の課題は「従来の広告収益モデルからの脱却」と「メディアとしてのポテンシャル」を収益にどう結びつけるかだと思います。だから課題は課題として頭の知恵を振り絞って考えるべきで、「ダメ」なんかじゃないんだぞ、ということが言いたいのでありました。
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