コンテンツは人間が作る

ヤトミックカフェ運営人の矢透泰文です。
去る2013年6月8日、糸井重里さんと伊賀泰代さんのトークイベントに行ってきました。ほぼ日の「はたらきたい」展の開催を記念して行われた「働くこと」についてのイベントです。

刺激的な90分でした。マッキンゼーの面接担当を行なっていた伊賀さんの「採用されるのはどんな人?」という話や、糸井さんの「自分には、嫌なことはやりたくないという “欲望” がある」という話も印象に残ったのですが、特に「働くということ」の中に嘘(あるいはありもしない理想論)が蔓延している、という話がドキッとしました(つまり、キャンペーンをするにあたって成功する根拠を示せと言われ、まだありもしない結果を証明するための資料を作るといった類の)。

それを聞いて、インスピレーションを受けたので、思いつくままに書いてみようと思います。

File000370626123

世の中のマーケティングトレンドでは、インバウンドマーケティングとか、コンテンツマーケティングが流行りです。オウンドメディアを作ったりとか、ユーザーとコミュニケーションをとって顧客化するとか。
ざっくりというと、広告でどんどんプッシュする方法ではなく、お客の側から見つけてもらう、好きになってもらう、ファンになってもらう、という施策です。

主権は消費者に移りました。企業のコントロール=広告・宣伝でイメージを操作できる時代は終わりました。私たち消費者は昔も今も好き勝手言いますけれども、今はその声が、ソーシャルメディアだなんだで、簡単にでかくなる。
企業がいかにカッチョええ広告を出しても、ソーシャルメディア上の噂が簡単に検索されてしまい、「店員の態度サイアク〜ムカツクわ〜〜!!」とつぶやく声にイメージが相殺されてしまうようになったです。

というだれでも知ってる自明の講義はともかく、そんな時代にあって、企業は「好かれる」ことを目標にしないといけなくなったのです。「好かれる」はコントロールできません。作れません。計画できません。お金を払えばどうなるものでもない。お金を払ってみんなに好かれるなら苦労はしない。

どげんかせんといかん!どげんか遷都物語!(@レキシ)

では「好かれる」には何が大事か、というとですね、私が思うに、企業がまず取るべきスタンスは「お前は何者か?お前は何者かを開示せよ」ということなんじゃないでしょうか。お前は何者かを開示せよ、あるいは存在感からどうしようもなくにじみ出るものを見せろと。何者か、と問われているわけで、装飾もごまかしもなし。丸ごと対峙するしかないのです。好かれるべきが最終的に企業であったとしても、何者か?をにじみ出させるのは、向こう側にいる「人間」になるだろうと思います。僕は、それこそが今のマーケティングトレンドの難しいところ、面白いところじゃないかと感じています。人間が丸ごとどーんと対峙するしかない、というところが。

思うのですが、そんなコンテンツマーケティング、オウンドメディアのあり方(人間丸ごとどーん)って、ラジオのパーソナリティに似ています。特にAMラジオ番組で喋る人を指す言葉「パーソナリティ」が表しているように、ラジオってつまり「誰が喋るか」です。誰が喋るかによって、番組が生きもするし、死にもする。一に人間、二に人間。

  • 魅力ある人を見つけてくる
  • その人の魅力を発揮する切り口を見つける
  • 継続して番組を作り上げていく

最新のマーケティングトレンドとして語られているようなことは、新しいことを言ってるようで、ラジオという既存のメディアでさんざん「実感」されていることだと思うんです。

私たちメデイアを受け取る側はすでに知っているんです。だから、企業の側は、その実感を無視してはいかんと思います。一番大事なものは仕組みとか概念じゃなくて、売上を証明するための数字や計画じゃなくて、そのまんま人間が向き合うことなんだよ、っていうことを、よくよく思っていたほうがいいと思ったですね。それを無視して机上の計画に走ったら、それこそ嘘が蔓延する世界になっちまうぜ。おしまい。

-ラジオの話, 世界の片隅から(よもやま話)