空き地で遊べない奴は、どこでも遊べない。
これは、とある人に聞いた『空き地理論』。

何をしたって、どこを見学したって、楽しさを見つけよう。
空き地でも堂々と遊べるような大人になろうじゃないか。

甘味男子・後編


(写真:内野 秀之)

そのあまりの人気ぶりを見せつけられ、
僕たちは早くもビビった。
しかし勇気を奮い起こして並ぶことにする。



僕の予想では、場違いの男どもは
たちまち女性たちに囲まれ、
「ちょっと、あんたら、空気読みなよ!」
などと、
女性専用車両に間違って乗ってしまったような
屈辱を受けると思っていた。

しかし、結果はあっけないもので
「誰も関心を払わない」
だった・・・。





「だって、甘味どころだもん。
若い女性はもっと カタカナのところ
行くんじゃないの」
とスズキDが言う。

なるほど。そうかも知れない。
確かに、年配の方も多い。
これは、甘味どころ、
意外に行きつけにできるかも?

ようやく、席に着ける順番が来た。

席についてあたりを見回すと、
男三人は、やはり異色だった。



これは、男が一人で入るなんて無理だ・・・
と、僕が弱気になりかけていると、

「お茶がぬるいですな」
と、スズキDが恐るべき発言を放ったのである。

「な、な、な、何を言っておるのだ!」
と僕は、うろたえながらたしなめる。

「ほら、茶道だと、最初にぬるいお茶を
出すって言うじゃん。
そういう気配りなのかな、と思ってさ」

店員の目が気になる、
情けないA型の僕である。

メニューを広げ、僕は早速
マイ・フェイバリット・甘味である
「クリームあんみつ」を指名する。

名のある甘味どころのあんみつ・・・
想像しただけで、ああ、お茶が欲しい。

「ねえ、ぜんざいとお汁粉って何が違うんだっけ?」
と、スズキDが言う。

またしても、本質を突く発言だ。ソクラテスか。

でも、確かに、何が違うんだろう?
あらためて言われると、わからない。

「こういうときのウィキペディアでしょ」
そう言うとスズキDは、携帯を取り出した。

おおっ、さすがデジタルっ子!
21世紀! ユビキタス!



情報化社会を渡り歩く男の姿に、
僕は素直に感心。

そして検索を終えたスズキDが言った。

「わかんなかった」

「・・・・・」


Wikipediaの記述によれば
ぜんざいとお汁粉、どちらも

小豆を砂糖で甘く煮て、この中に餅や白玉団子、
栗の甘露煮などを入れた食べ物


とあり、まったく同じ説明である。
山羊さん郵便的迷宮への入り口か!!

困ったときには、働く人に聞くのが一番
ということで、注文ついでに訊いてみることに。

「店員さん!お汁粉とぜんざいのちがいは
なんですか?」

「えーっと、お汁粉は汁気のあるあんこで、
ぜんざいは、汁気がない感じです」



・・・食感の違い?

※後日談
調べてみたところによると、
ひとことで「ぜんざい」と言っても
関東と関西では、その言葉が指す食べ物が、
ちがうらしい。
店員さんが説明してくれたのは、
あくまで関東の「ぜんざい」のようである。


いよいよ、
待望のクリームあんみつが運ばれてくる。



「あ、これ、アイスがうまい!」
と内野氏が絶賛。
でもアイスクリームは、甘味どころと
あまり関係ないような気が・・・

でも確かにおいしい。



そして、スズキDには、問題の
ぜんざいが運ばれてくる。



一口いただいたが、これもうまい。

だが、甘い。

当たり前だが、とにかく甘いのである。
甘味どころの面目躍如である。

ぜんざいに付いてきたおせんべいと、
スズキDが合わせて注文した、ところてん。
その二つが、彼の舌を救った。



・・・

そして、甘味を賞味し終えた三人に、
熱いお茶が運ばれた。

アイスクリームで冷え、
ぜんざいの甘さにじゃっかんやられた
我々に、お茶の渋みが沁みわたる・・・




結論:
甘味どころは、
男だけで入ってもそれほど拒絶はされない。
ただ、本質的には女性の場所である。

(完。)