Apple Musicの登場から、ラジオの未来を考える
こんにちは。ヤトミックカフェ運営人の矢透泰文です。
Apple musicの登場でにわかに「ラジオ」が盛り上がりを見せているという記事を読みました。
しかし、この記事の中でも終始ラジオが「古くさい」メディアだという論調が通奏低音になっていて、そこがちょっと引っかかりました。なぜならラジオは全然古くさくなってなんかいないからです。
今回は、あくまでリスナーの立場から、「ラジオは今後どうなっていくのか?」について考えてみました。
ラジオの変化の本質はプラットフォームの移動
おそらく、ラジオの主戦場は明確にインターネットに移りました。
日本国内に限っていえば、広告費がラジオがインターネットに抜かれたのが2006年で、およそ10年経つようです(出典)。
「ラジオの凋落」という論調は、おそらく広告費の減少、そして制作費の減少を指していると思います。現に、ラジオの現場で金がない!という話はよく聞きます。現場で働かれている人の苦労が忍ばれます。その中で面白い番組を作ってくれている方々に感謝の念がたえません。
ただ、だからといって「ラジオは古い」とか「終わった」というのは違うと思います。終わりつつあるのは、ラジオが乗っかってきた、電波で発信するという「プラットフォーム」ではないでしょうか。
電波で受信するラジオ受信機を単体で買う、というニーズは(震災で少し増えたにせよ)どんどん減少していると考えられます。つまり、単純にプラットフォーム上に人がいなくなっているのです。
その中で、2010年に登場したのが、インターネットでラジオが聴けるサービス「Radiko」です。2003年の調査によるとRadikoの登場でラジオを聴くリスナーが増えているようです(出典)。
やはりラジオの主戦場は、おそらくインターネットに移っていると思います。
ラジオのメディアとしての大きな変化
ラジオの主戦場がインターネットに移ることで、大きな変化が起こります。つまり、新聞が直面していることと本質的に同じだと思いますが、ラジオは、メディアとしてのビジネスモデルの変革を迫られ、コンテンツ性をより問われるようになってきています。
ビジネスモデルの変化
インターネットにおける「メディア」のあり方とビジネスモデルについては、多くの論争があります。ラジオもその限りではないと思います。
スポンサーを募集していくのか、Apple musicのように、大きなプラットフォームの1サービスとなるのか、Radiko premiumのように定額課金とするか、などなど、Webにおけるメディアのビジネスモデルの決定打がない今、模索は続きそうです。
ただ、確実に言えるのは、現在のメディアが大きな企業体を維持するのは難しくなってくると思います。
プレイヤーの変化
また、プラットフォームが変わると、プレイヤーの変更も迫られます。
インターネットにプラットフォームが移ると、圧倒的に運営のコストが安くなります。そうすると、新たなプレイヤーが参入してくるのは明白です。
例えば、Podcastで何かを発信しようとする人は、プラットフォームを自分で持つ必要はありません。安価でサーバーを借りたり、ブログサービスを使えば発信ができてしまいます。
「コンテンツ」という単位では、今までの「メディア」(大手ラジオ局など)と、小さい組織、さらには個人とのあいだに差はありません。
旧来のメディアは、今まで戦うことのなかったプレイヤーと競争をすることを求められます。このあたり、電気自動車の台頭でプレイヤーのガラガラポンが起こった自動車業界と似ていると思います。
ラジオの未来は「アナログ性」にあり
ただ、ラジオのプラットフォームが変化しようと、リスナーがラジオに求めるものは本質的には変わらない気がします。
ラジオのリスナーがラジオに求めるのは「人の面白さ」「気持ちのいい音楽」「ゆるい連帯感」「決まった時間に放送される安心感」「いざというときに頼りになる」といったところではないでしょうか。
エントリーの最初に引用した記事でもくしくも書かれているように、ラジオの人気を作るのは、結局は「人」です。ラジオの人気とは、人の人気といっていいと思います。音楽主体のApple musicのラジオでさえ、人気のDJが選曲している、というキュレーションの面白さが第一です。
しかし、その「人の面白さ」が一番難しい。
ラジオDJ、パーソナリティの面白さは千差万別ですが、「面白くないラジオ」と「面白いラジオ」の先は明確にあり、いったいその面白さの正体とはなんなのか?ということは、もっと考えられてもいいような気がします。
その部分はテクノロジーでも補完できない部分であり、そうしたラジオの「アナログ性」は、これからますます際立ってくるように思います。