小さなこと。生活ということ。


ヤトミックカフェの、出発時のテーマは
「生活を考える」
ということだった。

学生から社会人へと離陸するにあたり
生活を自分で作らなくちゃいけない、
という現実に直面し
「地に足の着いた生活、とは何だろう?」
とか、そういうことを
クソ真面目に考えていた時期があった。

今になって、たとえば
「気の置けない仲間との酒の席」
というような些細なことが、案外
地に足の着いた生活ということなのかな、
などと思うようになった。

僕はお酒は飲めないが、酒の席は楽しい。

「お酒はうまいから飲むのであって、
酔うために飲むのではない」
と、内田百けんさんも言っておりますが、
私はお酒が強い、
とかいうことを自慢するのは
「お酒は酔うためのものだ」
という考えを披瀝しているようで恥ずかしい。

まあとにかく、仲間との酒席は楽しい。

僕は今年27歳になってしまうが
目に見える能力が何もなく、
社会の中で、自分の価値を証たてるのに
役に立つようなものが何もない。

ただふらふらと生きているのだが、
よく成功者の自伝にあるように
偶然に、何かに引っ張り上げられるような
ラッキーに出会うわけでもなく
日々、不安でおしつぶされそうだ。

そういう人はきっとたくさん
いるのだろうけれども
たとえ同じような不安の下にいても、
男性と女性とでは、考え方が異なるらしい。

男性は、下手に未来を見てしまうために
「お先真っ暗だ!」
と思って、現在の生活さえも真っ暗に
感じられてしまう。

それに対して女性は、今を大切に思うので
いかに今を楽しく生きるかを考える。

女性の、買い物や食事をどん欲に楽しもう
という姿を見ていると、
そうなんだろうなあ、と思う。

目の前の動かしがたい現実に、
頭からぶつかって、つぶれてしまうのは
だいたい、男のほうなのだ。

そんなどうしようもないことは
どうしようもないのだから
ひとまず、今を楽しもうじゃないか。
生活をしっかりやろうじゃないか。
できることから、やろうじゃないか。

そんな応援歌が、
巷では大きくなってきたように思う。
僕が好きな雑誌である
クウネル」や 「Arne」などは
そういうメッセージを、ずっと
発信しつづけている。

人生をどう生きるべきなのか!

という大問題を前にすれば、
楽しいお酒の席、とかいうものは
つまらない、取るに足らないものだと
思えるかもしれないけれども

僕はむしろ、そういう小さなことのほうを
ばーっと一生懸命にやるほうに
舵を切っていきたい、などと思うのだ。