ただのいい人ではダメ。喜ばれる人になろう。|「GIVE & TAKE」を読む

こんにちは。ヤトミックカフェ運営人の矢透泰文です。

「GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代」という本を読みました。話題になっているので読んだ人も多いかと思います。

私は、会社で読んだ人が多かったのと、2013年のマイ・ベスト「ストーリーとしての競争戦略」の著者・楠木建さんの訳だということで、読みました。

GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)
アダム グラント
三笠書房
売り上げランキング: 3,339

評判通り、内容の面白さにガンガンしびれたのですが、加えて、深いメッセージにも背筋が伸びました。ただの「いい人」ではダメだよ、と。

楠木建先生の解説が超お得!

本書のお得なところは、楠木建さんの丁寧な解説がはじめにあることです。解説だけで、かなり満足。前菜なのにお腹いっぱい・大満足。わかりやすい概要と、さらに楠木節も堪能できます。これだけ読んでから読むかどうかを判断しても良いくらいではないでしょうか。

少し長いですが、抜粋してみます。これで本書に出てくる登場人物の概要がお分かりいただけるかと思います。

著者の議論の基底にあるのは、「ギバー(与える人)」「テイカー(受けとる人)」「マッチャー(バランスをとる人)」という、人間の思考と行動の三類型だ。  実にシンプルな分類だが、これがなかなか奥深い。

(略)

ギバーとテイカーとマッチャーでは、「ギブ&テイク」にいたる筋道がまるで異なる。本書の三分類は、「ギブ&テイク」という仕事の場面でごく日常的に見られる相互作用に対して人間がもつ前提の違いに焦点を当てている。なぜ、どのように「ギブ&テイク」にいたるのか、という因果論理の違いに注目しているといってもよい。

(略)

テイカーであったとしても、ギブすることも少なくない。しかし、テイカーが前提とする因果論理はこうなる。彼らにとっては、目的はあくまでも「テイク」にある。何でも自分中心に考え、自分の利益を得る手段としてのみ、相手に「ギブする」。裏を返せば、テイクという目的を達成する手段として有効だと考えれば、テイカーは実に積極的にギブすることもあるわけだ。  これに対して、ギバーは思考と行動の順番が逆になる。まずギブしようとする。相手のことを考え、真っ先に相手に与える。

本編はその実証ということで、具体的データや・エピソードもかなり面白かったです。特に『ザ・シンプソンズ』の脚本家ジョージ・マイヤーの話には、仕事に対するモチベーションをかき立てられます。

単に「いい人」ではダメ!「与えるもの」があるかどうかを自分に問おう

本書は単に「いい人」になろう!という話ではありません。むしろ、単にいい人なだけではダメで、自分の心をないがしろにすると、あっという間に燃え尽きてしまいます。ただの「いい人」は続かないのです。

燃え尽きないための戦略が本書ではいろいろ書かれていますが、特に僕が心惹かれたのは「相手の役に立っていることを実感するようにしよう」というところです。

ギバーは、「与えることで、自分が相手の役に立っているという実感」を感じることでパワーをもらいます。つまり、人を助けると同時に自分を助けている。他者に与えることが、自分を利することにつながっています。

これはメチャクチャ感覚がわかって、つまり、自己承認欲を満たすことと結びついているのだと思うのです。

で、どういう場合に「自己承認欲」が満たされるだろう?と考えると、

  • 自分が得意なことで貢献できた
  • 自分がやっていて楽しいことで貢献できた

ということが上げられると思います。平たく言うと、自分の得意分野でしょうか。それにいち早く気づいて、伸ばせた人ほど、効果的に人に「与える」ことができるのです。

そのことについて、楠木先生は、解説で以下のように書かれています(ああ、なんてお得な解説なんだろう!)。

要するに、自分がその仕事をせずにはおれないという"意義"がポイントだ。 「自分にとって意義のあることをする」 「自分が楽しめることをする」  この条件が満たされれば、ギバーは他人だけではなく、自分にも「与える」ことができる。自分が認識する「意義」のもとに、他者と自己が一体化するからだ。

このように、相手に「与える」というのは、実は容易な話ではないと思います。特に仕事の場ではそうです。なぜなら、相手に喜んでもらうためには、専門性や経験などのスキルが必要になるから。これってつまり「良い仕事をするために身に付けるべきこと」そのものですね。

ただの「いい人」では、成功するギバーになれない、という理由がここにもあります。そもそも人に喜ばれる能力がなければ、「与える」ことはできないのです。その能力は、自分の得意分野を見つけて、伸ばしていくしかない、と。

自分ではなく、他者にベクトルを向けること。

楠木先生は、解説で以下のように書いています。

成功するギバーは、「自己犠牲」ではなく、「他者志向性」をもっている。他者志向性とは、たとえばチームで仕事をするときに、自分の取り分を心配するのではなく、みんなの幸せのために高い成果を出す、そこに目的を設定するということだ。

成功するギバーになるためのもう一つの条件が、他者にベクトルを向けること。これも、「良い仕事を」をするためには必須の条件かと思います。

自分はこの部分が弱いみたいで、まだまだ人に与えることができていません。役に立ちたい!という気持ちはあるのですが、何しろ、自分ひとりを食わせるのにも精一杯だからなあ・・・焦るなあ・・・(そんな自分のことばかりを考えている時点で、まだまだ「他者志向性」には程遠いのかも)。

まとめ

ことほど左様に、「GIVE & TAKE」は、いろいろな示唆を与えてくれる本なのですが、「使える」本でもあります。

前述の「燃え尽きない与え方」はもちろん、人を食い物にする「テイカー」を見分ける方法などは参考になります。自分がどうも「ギバー」っぽいぞ、と思われる方は、読んでみることをおすすめします。

「ギバー」「テイカー」「マッチャー」と、本書では人間を3種類に分けていますが、まあスパッと割り切れるものではありません。時と場合に応じて、どの顔を持つこともあるでしょう。

その中でも、「ギバー」という思考・行動特性を自分のものにしようと考えると、社会の中に生きる自分の生き方や、自分の価値、自分の得意分野は何か?といったものを、総体的に問われることになります。その感じが、私にはとても心地よかったです。

「お人好しであることで人に利用されているかも・・・?」と思っている方は、ぜひ読んでみてください!

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