大事なことは自分から生まれる。| 「ストーリーとしての競争戦略」を読んで
こんにちは。ヤトミックカフェ運営人の矢透泰文です。
今回のエントリーは2013年に読んだ中で一番感動した「ストーリーとしての競争戦略」という本についてです。
強い戦略とは何か?何が強さを生み出すのか?
ということを突き詰めた本ですが、私のような素人にもよくわかるばかりか、感動すら与えてくれました。
東洋経済新報社
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「戦略」とはなにか?
私は仕事でもよく「戦略」という言葉を使います。しかし、本当の本当に、「戦略とはなにか」ということがよくわかっていなかったと実感しました。
本書によると戦略とは「違いをつくって、つなげる」ということです。
つなげるとは、一つ一つの打ち手を、因果関係によって結びつけ「太く長いストーリー」を構成させることです。
例えば本書では、サウスウエスト航空を例に出しています。
サウスウエスト航空では、それまで航空会社の常識だった「ハブ・アンド・スポーク(拠点大都市経由)方式」を採用せず、「小規模な二次空港を直行便でつなぐ」という打ち手を取っています。
さらにその打ち手は「到着から出発までを15分で行う」「乗り継ぎ荷物サービスをしない」「低い人件費」というように一つ一つが次々とつながります。そして最終的にコスト優位を生み出すストーリーを構成しています。
このように、一つ一つを見ると平凡な打ち手であっても、それらをつなげることで強さを生み出すのが戦略の本質だというのです。
勝ち続けるための「戦略」とは?
さらに、本書ではこのように述べられています。
競争戦略」というと小難しそうに聞こえるのですが、あっさりといってしまえば、「どうやって儲けるのか」という話です。もうちょっというと、競争がある中で、いかにして他社よりも優れた収益を持続的に達成するのか
(「ストーリーとしての競争戦略」)
競争がある中で、というのがミソです。よほどの独占市場ではない限り、どんなに素晴らしい、画期的なアイディアも、必ずライバルが真似をしだします。競合に差をつけ、継続して利益を出すには、何が必要なのでしょうか。
戦略の持続的な優位性をもたらすのは、独自のストーリーであり、独自のストーリーを生み出すのが「コンセプト」です。
できるだけ賞味期間の長いストーリーをつくるためにも、人間の変わらない本性を捉えたコンセプトが大切になります。事業を取り巻く環境や機会は常に変化するものです。絶えず変化していく環境や機会の表層を追いかけ回してしまうと、結局のところ目が回るだけで、筋の良いストーリーは生まれません。だから、「変わらないもの」としての人間の本性を捉えたコンセプトが必要なのです。
(「ストーリーとしての競争戦略」)
例えば、本書で述べられている例の一つが、先ほど例に出したサウスウエスト航空です。サウスウエスト航空のコンセプトは「空飛ぶバス」。何と明快で独自なコンセプト!
このコンセプトにもとづいて、一つ一つの戦略がつながり「ストーリー」を構成していきます。一つ一つの打ち手は平凡なものでも、因果関係によってつながることで、他には真似できない優位を生み出す「戦略ストーリー」となるのです。
大事なのは「つながり」ですから、例えば競合が表面的に見える部分だけをなぞったり真似たりしても意味がないばかりか、つながりをなぞっていないために、真似をした競合が自壊してしまうことさえ起こるといいます。これが継続優位を生み出す源泉です。
大事なことは自分の頭から生まれる
本書で目からウロコだったのが、「全てはコンセプトのために」というところです。全ての打ち手は、コンセプトに貢献するものでなくてはいけません。
コンセプトは、簡単に変わるものではいけない、人間の本性をとらえたものでなくてはいけない。コンセプトが人間の本性を捉えていればいるほど、そこから生まれるつながる打ち手は効果的であり、生まれる戦略は意味を為します。
誰に価値を提供するのか。何のためにやるのか。何を良くするのか?
コンセプトが生まれるのは、頭の中です。
要するにコンセプトは、自分の頭で深くじっくりと考えるしかないのです。どんなに投資をしても、自分の頭を使わなければコンセプトは構想できません。流行の画期的な技術やそのときに華々しく成長している市場セグメント、今そこにいる顧客の声、こうした「外部の事情」に惑わされてはなりません。人間の変わらない本性を見つめるためには、そのような表面的な誘惑や情報の洪水を意識的に遮断することがむしろ大切です。
(「ストーリーとしての競争戦略」)
マーケティングの本を読んでいると、次から次へと新しい言葉が出てきて目が眩みそうになります。そして「追いつかないと、知らないと」と、インプットに全ての時間を費やしてしまいそうになります。
しかし、それだけではやはり不足なのです。
始まりは頭のなかです。大事なことは自分の中から生み出さなければいけないのです。
前回のエントリーで書いたように、「自分の頭で考える」ことは技術として身に付けることができます。
そこに「自分からしか生まれ得ないもの」をどう付加していくか?が大事なところです。
驚くほど簡略化し、我田引水した結論で恐縮ですが、そんな身近なところから強い戦略づくりが始まっているのかな、と思いました。
2013年は「ストーリーとしての競争戦略」ならびに「ストレングス・ファインダー」と出会うことができ、本当に良かったです。
2014年もどうぞよろしくお願いします。