ライフハックは結局、何のためにあるのか?

ヤトミックカフェ運営人の矢透泰文です。
今回は「思考のガジェット」シリーズです。考え方や思考術の類をガジェット記事のように取り上げてレビューしたり紹介するシリーズです。
この正月は「クラウド時代のタスク管理の技術」を貪るように読んでいました。この本はあちこちで評判がよく、ちょうど昨年よりタスク管理を学んでいたので、ぜひ読みたいと思っていた本でした。

クラウド時代のタスク管理の技術―驚くほど仕事が片付いてしまう!
佐々木 正悟
東洋経済新報社
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「クラウド時代のタスク管理の技術」とは

著者は、ライフハック心理学を主催する佐々木正悟さん。タイトル通り「タスク管理」についての本です。

過去のエントリー「自己改造としてのタスク管理」でも書きましたが、タスク管理を学ぼうと思ったきっかけは、昨年初めに大きめの仕事を担当したとき、タスクが次から次に発生して、頭が爆発しそうになったからです。

メールや電話で、目の前のタスクが中断し、別のタスクが増えてしまうことなど日常茶飯事で、毎日深夜までかけても仕事が終わらない、自分がどれだけ仕事を抱えているかがわからない、という恐ろしい経験をしました。

次から次へと発生するタスクをいつ、どういう順番で片付けていけばよいか、その具体的な方法を知りたかったのでした。

この本は、その技術を具体的に教えてくれ「これは役立つ!」と感じさせてくれました。モチベーションを上げろ!などといった精神論ではなく、まさに求めていた「具体的なタスク管理の技術」でした。

普通に仕事をしていたら、本書で紹介されているような「タスク管理ツール」や「プロジェクト管理ツール」といった道具は知ることができたでしょうか?

一日のタスクをどのようにリストアップして、片付けていけばいいか、降って湧いたタスクをどのように管理していけばいいか、知ることができたでしょうか?

そういった技術が具体的に書いてあります。興味をもたれた方はぜひご一読をおすすめします。

時間がない!という不幸

タスクをどうさばくか、ということが私の目下の課題ですが、今ではもっと大きな不満があります。それは「自分の時間が取れない」ということです。

「仕事に打ち込んでいればそれでいい。仕事もできないうちはプライベートなどガタガタ言うな」という人もいますが、仕事とプライベートどちらが大事か、という議論は無駄です。なぜなら、そもそも時間自体が希少資源になりつつあるからです。仕事に割り当てる時間さえ、足りなくなってきていると感じます。

つまり限られた時間に対してタスクが多すぎる。

私はこの状況が大変不満ですし、仕事やプライベートでも、自分のやりたいことに時間が取れないことは人生の損失だと思っています。

ただ、昨年話題になった本「ワーク・シフト」を読んでも分かる通り、この流れは止まりませんし、これからますますひどくなる一方です。

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
リンダ・グラットン
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ライフハックは結局、何のためにあるのか

私がこの本にますます信頼を置いたのは、以下の様な文章があるからです。

本書のようなジャンルの本はしばしば「ライフハック」と言われます。「ライフハック」の定義は意外に難しいのですが、私は「やりたいことをやるために、やり方を工夫すること」だと思っています。

(略)

仕事や生活の「やるべきこと」を短い時間で効率的にやれるようになれば、当然「余暇」が生まれます。

(略)

ただ余暇に読者が「何をするか?」はタスク管理システムの範疇外ですが、タスク管理システムを使えば、余暇にすることをより効率的に行えるようにはできます。

この哲学に裏打ちされているからこそ、「タスク管理の技術」が生きてくるのです。逆に、哲学のない仕事術は、私にはあまり合わないと感じます。

とにかく限られた資源・時間を上手に使わないことには、幸せになれない時代になってしまったようです。私は、幸せになるための手段の一つとして「タスク管理の技術」は必要だと考えています。

ライフハックが一大ブームです。仕事術から勉強術、整理術、早起き術まで、「生活のありとあらゆることがちょっとしたコツでうまくいく!」と言わんばかりの記事が並んでいます。

「ちょっとしたコツでうまくいくほど、人間は単純じゃねえよ、クソが!」と私は思ってしまうのですが、裏返せば、現在がいかに生きにくいかの現れでしょう。

ただでさえ時間の少ないなか、膨大なタスクと、無数の選択肢に囲まれて、何事も為せないまま人生が過ぎ去ろうとしています。しかし私はここから逃げ出すわけにはいかず、生きていかなくてはいけません。

そこでライフハックです。

ライフハックは、小手先の技術かもしれないけれど、苦しい中のほんのひとときの息継ぎなのかもしれないけれど、ないよりはマシでしょう。息継ぎを繰り返しているうちに、状況が、自分が変わるかもしれない。

ライフハックは、人を何らかの形で幸せにするためにあるべきだと思います。海千山千の記事や書籍が出ていますが、その哲学に裏打ちされ、本当に助けになるものを選ばなければ、それこそ時間を無駄にしてしまうことになるでしょう。

「クラウド時代のタスク管理の技術」は、一読の価値があると思います。その後の実践も込みで、という条件付きですが。

-思考のガジェット(ライフハック的な話)