1:買うまでの壮大な道のりまでも。
ここらでひとつ、
きちんと買い物をしたい。
思いきり悩んで、選んで、試して
買い物を楽しみたい。
実際に品物を手にするまでの
その過程までを、じっくりと
味わってやろうじゃないか。
というのが、この連載の趣旨だ。
・・・
普通の人ならきっと
服や、自分の趣味のものを
ワクワクしながら買い物した経験が
一度や二度はあるだろう。
大きな買い物、例えば
車や楽器を買った人もいるだろう。
そこには
買うにいたるまでの、壮大な
楽しみの過程があるはずだ。
なにしろ、遠足でも旅行でも、
実際に行くまでが楽しい。
買い物だってそうだろう。
「あれを買おうか、これを買おうか」
と思いながら、ひそかにヒヒヒと
ほくそ笑む時間までを、ひっくるめて、
買い物の楽しみなのではあるまいか?
で、
唐突だが、靴を買おうと思うのだ。
僕が現在履いている靴は
いわゆるスニーカーシューズである。
2年くらい前に買って、
履きやすかったので、ほとんど
毎日履いていた。
僕は靴の履き手としては、三流である。
なにしろ、毎日毎日、同じ靴を
履いているのだ。
女工哀史も真っ青の酷使ぶりである。
TPOも泣くというものだろう。
それじゃいかんぞ。
と、26歳にして思ったのである。
(遅い)
ここらでもう一足くらい
靴を増やすべきだと。
しかし、普段ならすぐに
ABCマートあたりに駆け込むところを、
ちょっとストップして考えてみたのが
今までと違うところだ。
「自分はどういう靴がほしいだろう?」
(つづく)