ストーブの話A
電熱式のストーブは、冬を越すには少々難のあるシロモノだった。
部屋に帰ってくると、真っ先にストーブにしがみつくようにして座って、
じいっとしていないと寒くて仕方がない。
絶えずストーブの近くにいないと暖が取れない、というのは、
何だか、恋人を束縛するような、携帯電話の履歴をのぞくような、
そんないやらしさに通じる気がして、僕は嫌だった。
しかし、実際、寒くて仕方がない。
寒すぎて、泊まりに来た友達が帰ってしまったこともある。
そこでとうとう、ガスストーブを買うことにした。
ガスストーブは値段こそ高かったが、燃費も悪くないし、
何より、部屋全体が温まる。
うれしがっていたのだが、次のシーズンには、
なんとガスストーブを使うことができなかった。
わけあって僕は別のアパートに引っ越したのだけれど、
引っ越した先の次の部屋には、ガス栓がなかったのだ。
(正確に言うと、あったけれど使えなかった)
仕方なく、3つ目のストーブを購入することにした。