色落ちとは、「衣服や布地などの色が落ちること。」
はじめは色鮮やかだったものが色あせていく、とは、
まるで人の記憶のよう。
狭い部屋にあふれている、一つ一つの「もの」と、
その記憶を綴ります。

ストーブの話@


僕はストーブを2台所有している。
ガスストーブ、電気ストーブ(温風式)と、1台ずつである。
そのくせ、一人暮らしを始めてから5回の冬を迎えたが、
一度として、凍えない冬はなかった。

ストーブについては、多難の歴史がある。

はじめは、電熱式のストーブを使っていた。
使うと、電熱管が真っ赤になった。
しかし電熱式のものは、そばに寄ると熱いくらいなのだが、
ちょっと離れると、もうダメなのだ。

あれは、部屋を暖めるには向いていない。
オマケに、電力ばかりを消費する。

電熱式のストーブには面白い話があって、
冬の朝、ストーブのスイッチをつけると、
アパート中の電気がバタンと落ちる。
それは、一部屋のアンペア数が5アンペアしか
割り当てられてなかったからなのである。
あまりに頻繁に電気が落ちるから、
管理人のおばあさんがある朝、僕の部屋に来て、

「ストーブを使うな」
と、言ったのだ。

冗談ではなく、こちらも部屋で凍死するのは嫌なので、抵抗した。
だから相変わらず、朝が来るたびに「バタン、バタン、バタン」と
電気が落ち続けた。
結局、アパートに工事が入り、アンペア数が上がることになった。
一体他の人たちはどうやって冬を越していたのか、
それはわからなかった。