「内向型であること」を武器にする生き方|「内向型人間がもつ秘めたる影響力」を読む

こんにちは。ヤトミックカフェ運営人の矢透泰文です。

ひさびさに「内向型を強みにする」シリーズ(a.k.a 「この世はそんなに悪くないよと真夜中に台所で自分に話しかける」シリーズ)です。

このサイトのアクセスを見ておりますと、何人か「内向的 生きづらい」というキーワードで訪問している人がいます。もしかすると、新社会人が増えるこの季節、新しい環境になじめずに毎日を送っているのかもしれません。

私も日々、生きづらさを感じている人間です。とても他人ごとではありません。

今回は「内向型人間がもつ秘めたる影響力」という本を取り上げ、「内向的であることを武器にする生き方」を考えてみたいと思います。実質、自分自身に向けて書いています。

内向型人間がもつ秘めたる影響力
ジェニファー・B・カーンウェイラー 境 誠輝
すばる舎
売り上げランキング: 395,457

「内向型」とは、単に充電方法の問題なのだ

さて、本の紹介に移る前に、このブログでも何回か書いていますが、「内向型」とは何か?について、あらためて書いておきましょう。

「内向型」という言葉をあらためて注目キーワードに押し上げた名著「内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力」の記述によると、

内向型は自己の内部の思考や感情に心惹かれ、外向型は外部の人々や活動に心惹かれる。内向型は周囲で起きる出来事の意味を考え、外向型はその出来事に自分から飛び込んでいく。内向型はひとりになることでエネルギーを充電し、外向型は十分に社会で活動しないと充電が必要になる。
(「内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力」※太字は矢透泰文)

上記はユングの言葉ですが、つまり「内向型」とは、静かな環境で、ゆっくりと思索の時間を摂ることでエネルギーを充電する、そんな志向の人を指します。エネルギー充電のタイプの分類であり、よくも悪くもなく、それだけです。ひとりで考え事をしていると、ムクムク・ワクワクと力が湧いてくるような経験をしたことがある人は、内向型かも知れません。

「内向型」と「内気」は違うのだが、両方を持っている人も多いのだ

そして、かなり紛らわしいのですが、内向型であることは、内気であることとイコールではありません。

内向型だからといって内気ともかぎらない。内気とは他人から非難されたり屈辱を感じたりすることを恐れる性質であり、内向性とは刺激が強すぎない環境を好む性質である。
(「内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力」)

ビル・ゲイツのように、内気でない内向型も存在します。しかし、内向型の人は「内気」という別の性質を重ねて持っている場合が多く、そうした人が、より「生きづらさ」という痛みを抱えているようです。

そういう人が、何かの手違いで、外向型の性質が尊ばれる環境(自己主張せよ、自己表現せよ、発言せよ、プレゼンせよ)に放り込まれてしまった場合、生きづらさが加速するであろうことは、想像に難くありません・・・。

そんなとき、どうすればよいのでしょうか?

「内向的であること」を武器にする生き方があるのだ

「内向型人間がもつ秘めたる影響力」は、「内向型であること」を活かしながら、周囲に向けて影響力を発揮する方法について、書いた本です。

ただし、即効性のある「ライフハック」のようなものではありません。

本書では、社会的に意義のある仕事を成し遂げたり、今まさにそのような仕事に取り組んでいる人の中に、「内向的であること」を活かした人が多くいることを紹介しています。そうした人は、外向型の人がやるように、自分自身をことさらにアピールしたりしないのに、周囲の人を巻き込み、自分自身のやるべきことをしっかりと前進させているのです。

それは一体、どのような力によるものなのでしょうか?

多くの秘めたる影響力者への観察とインタビューを通して浮かび上がってきたことがあります。何らかのものを掌中に収めた内向型人間に共通する、内包された〈力〉の存在です。(略)

1.静なる時間
2.備え
3.聴く力
4.焦点をあてた会話
5.書く力
6.ソーシャル・メディアの慎重活用
ここに挙げるそれぞれの力は、影響力発揮への強力な引き金となっていきます。それぞれの力を組み合わせた時、結果は単純な数学で計算することのできない力を発揮することになるのです。1+1が必ずしも2になるとは限らず、3倍にも、4倍にも・・・。
(「内向型人間がもつ秘めたる影響力」)

本書では、上の6つを「QI:Quiet Influence」(静かなる影響力)と呼びます。これが「内向型であること」を活かした武器です。内向型の人は、この「QI」を育てることで、周囲に向けて影響力を発揮することができるといいます。つまり、自分自身のやりたいこと、やるべきことを実現させるために、周囲の人を巻き込んでいくことです。

規模の大小はあれ、仕事では「周囲の人を巻き込む」ことが欠かせません。内向型を自認していて、まさにそこに苦手意識を感じている人は、自らの「QI」を意識して育ててみるのはいかがでしょう。

「静なる時間」は内向型の電源なのだ

「QI」をもたらす6つの〈力〉は、以下の図のような関係性になっています。



20140423 QI img

特に大事だとされているのが、1番目の「静なる時間」と、そして2番めの「備え」です。これは「内向型」の人にとって戻るべき「ベースキャンプ」だと表されています。

「静なる時間」は、誰にも邪魔されない、ひとりきりの時間のことです。「内向型」の人は、まさにそこからエネルギーを得るので、その時間を確保することは至上命題なのです。その時間は人によりますが、数分でも、数時間でも構いません。その手段も、ランチにひとりでいくとか、エクササイズをするとか、日記を書くとか、昼寝をするとか、様々だそうです。

内向型を自認している人なら、「1人になりて〜」と強く思うことはしばしばだと思います。やましさを抱くことはありません。堂々と「静なる時間」をとって充電しましょう。

自信を持って行動するために「備え」が欠かせないのだ

2番めの「備え」は、自信を持って行動するための大事なプロセスです。「静なる時間」とセットとなって、影響力を高めるのに貢献します。

内向型の人は、「静なる時間」の中にいるあいだ、自分がするべきことについて、じっくりと行動指針を立て、周到に準備をします。考えられるリスクを挙げ、回避の手段を考えます。誰かを説得するべきだと思ったら、説得材料を周到に集めます。必要な知識があれば、身に付けるべく努力します。この諸々の「備え」が、いざ行動する時に自分を助けてくれます。

内向型である私は、「準備なんかあと!まずは行動!」というフットワークの軽さを持ち合わせていないことを、しばしばコンプレックスに感じます。特に、ストレングス・ファインダーで「慎重さ」という資質を持つ私は、そのコンプレックスが人一倍強いように思います。しかし、「QI」によれば、この資質は「武器」なのです。目からうろこでした。やはり自分の資質は、積極的に磨かなくては損なのでしょうね・・・。

ただし、これは「QI」の6つ全てに共通するのですが、〈力〉の過剰摂取は注意です。例えば、「静なる時間」の取り過ぎは、孤立感を生んだり、逆に力を吸い取られてしまいます。何事もバランスが大事。過ぎたるは及ばざるがごとしです!

まとめ:「QI」を身につけながら生きるのだ

「QI」の残りの4つは、それぞれ人によって何を活かすかは異なるようです。全てを身につける必要はない、と本書には書かれています。得意な力、また仕事で必要な力があれば、意識して伸ばせば良いと。ただし、今まで自分が使っていなかった〈力〉を試行錯誤して身につけるのは大歓迎。

新しい力を掌中にした時の手応えを感じて下さい。たとえば、それまでの武器が書く力であったなら、新しく手にした焦点をあてた会話という力に、初めのうちはどこか違和感が伴うものです。新しい武器の戦果がどんなものであったか、じっくりと感じ取ってみるのです。また、周りがどのように反応をするかということも。たとえば、日頃無口なあなたがおしゃべりを始めたら相手はびっくりしたり、硬くなってしまうかもしれません。慣れることには、自分自身も含めてほんの少しだけ時間のかかるものです。
(「内向型人間がもつ秘めたる影響力」)

「内向型人間がもつ秘めたる影響力」は、即効性のある本ではありません。ただちに生きづらさを解消してくれる本ではありません。「内向型であること」を武器にする方法と、その武器の使い方について書かれていますが、その後は、あなたが意識して日々の中で試行錯誤しながら使っていくしかありません。

しかしそのコツコツとした歩みを日々の楽しみにできるのが、「内向型であること」の特権でもあるわけですが。

関連エントリー
当たり前のことだが内向型は悪ではありません
「内向型人間の時代」に学ぶ、私たちの2つの誤解

-内向型を強みにする話