裁判傍聴に行くの巻
第6回:痴漢事件の重大さを知る
つづいて、証人が傍聴席から入廷。
なんと被告人の妻である。
しかもさっきまで、法廷の前の廊下で
赤ちゃんをあやしていた人だ。
弁護士(若い男性)から質問。
弁護士
「夫の逮捕を聞いたときは、
どういう気持ちでしたか?」
妻
「警察から電話があったときは、
とても信じられませんでした」
弁護士
「被告人と別れようとは思いませんでしたか」
妻
「私にも責任があると思います。
これからは、一生夫をカントクすることで
罪を償おうと考えています」
弁護士
「同じ女性として、
被害者の気持ちをどう考えますか」
妻
「言葉にできないくらいの
恐怖だったと思います」
検察官
「まだ子供が小さく、
世話も大変だと思いますが
そんな状況でも、夫を監督していけますか」
妻
「できます」
ああ、奥さん、しっかりしてる!
僕は心の中で喝采したのだった。
子供もまだ0歳。夫は裁判沙汰。
はっきり言ってつらい。
こんな場所に立つだけでもつらい。
声こそ若いけれど、彼女はすごかった。
こんな大変な状況の中、何もかもが
嫌になってしまうこともあっただろう。
でも、身にふりかかった災難から逃げず、
真正面からしっかりと引き受けている。
エラい!奥さん、あんたはエラいよ!
それと同時に、痴漢事件というものの
重大さも身に染みた。
どの犯罪でもそうだけれど、
被害者にはもちろん、加害者の家族にも
深い傷を残してしまう。
えん罪の問題だとか、難しいところは
いろいろあるんだろうけれど、
目の前でこうして、
ナマの人生を突きつけられると
理屈とかが吹き飛んでしまう。
これも、裁判傍聴のすごいところか?
つづいて、被告人への質問にうつる。
果たして、あの「憎めない顔の被告人」は
何を語るのか?
(つづく)