色落ちとは、「衣服や布地などの色が落ちること。」
はじめは色鮮やかだったものが色あせていく、とは、
まるで人の記憶のよう。
狭い部屋にあふれている、一つ一つの「もの」と、
その記憶を綴ります。

ふとんの話


貧乏アパートにずっと住んでいると、
住環境の悪さには、あきらめがつく。

陽が当たらない。一日中。365日。
泣きたくなるときがある。

ふとんがろくに干せないのだ。

実家を出るとき、ふとんを持って出た。

ふとんは、はじめ、畳にじかに敷いて、
使っていたはずである。

ところが、時を経るにつれ、そのまま
敷いたのでは、背中や腰やお尻が痛くって、
とてもじゃないけれど眠れなくなった。

『せんべいぶとん』になってしまっていたのだ。

だから、ふとんの下に敷くマットを買った。
貧乏というのは、このように、モノが悲しく
消耗することなのだ、と悟った。

とにかく、機会が訪れれば、南国のような太陽の下で、
長時間、長時間、ふとんを干し続けたい。