色落ちとは、「衣服や布地などの色が落ちること。」
はじめは色鮮やかだったものが色あせていく、とは、
まるで人の記憶のよう。
狭い部屋にあふれている、一つ一つの「もの」と、
その記憶を綴ります。

扇風機の話


一人暮らしをはじめたのが夏だった。
貧乏だったので、エアコンなんて使えなかった。

しかし部屋にいるだけで体中が汗まみれになるのに
閉口した。
アパートが、風が通り抜けられるような構造に
なっていないからだ。

悪い冗談か、漫画のようだけれど、
まったくサウナのように
吸う息が熱くてびっくりするくらい、暑いのだ。

たまらないので近くの電気屋で扇風機を買うことにした。
扇風機は、今日びとても安く買えるのである。

風力が「強」「中」「弱」と、調節できる、ごくごく
スタンダードなタイプである。
しかし、「強」は、所有5年目の今日に至るまで、
ほとんど使ったことがない。

電気代が恐かったのと、「強」にしたときの風力は、
不必要なくらいに強かったらだ。
部屋の中のものをやたら宙に舞い上がらせてしまう。

また、サウナのようになった貧乏アパートでは、
扇風機は、効果的とはあまり言い難い、
ということがわかった。