第5回:時代が変わる、映画も変わる


矢透
日本映画は面白いんだけど、どうも
「ど真ん中で撮るのは恥ずかしい」
っていう空気があるような気もするね。

仲尾
ど真ん中で撮る?

矢透
すでにできたものを、
パロディにして笑っちゃおう、というのが
多いような気がする。
だから「サブカル」というジャンルが強いのかな。
サブカルっていうのは、
昔あったものを引用して遊ぶのが
得意なジャンルだよね。

でも今は、怪獣映画というジャンルが
成立しにくいところがあって。

ゴジラ(第一作目は昭和29年公開)
とかの時代は、まだ戦争の陰が色濃くて、
あれは完全に原爆の象徴だったし、
つまり怪獣映画を撮れる時代背景があったんですよ。

仲尾
今は無理だよね。
9.11以降、怪獣映画なんて、
テロに見えてリアルすぎる。

矢透
ゴジラの、現時点で最終作とされてる作品
かなり悲惨で、ゴジラはもう主役じゃない。
菊川怜が暴れまくる映画になっちゃってる。

仲尾
菊川怜がでかくなるんだっけ?(笑い)

矢透
いや、そこまでも面白くないんです。

今は怪獣なんかやってる場合じゃない、
テロリストの方が怖いよ、みたいな。
だから今流行ってるパニック映画は、
正体不明のものが襲ってくる、
そういうのが多いような気がするんです。

仲尾
確かに、「ハプニング」もそうでした。

矢透
それは、戦ってるものの正体が見えない、
という時代背景のような気がして。

怪獣映画っていうのは、
倒すべき対象がどーんと見えちゃってるわけで、
「あれをやっつければいいんだろ」
みたいな。
それは、冷戦時代のアメリカであり、
ソ連であったような気がするんですね。

今、怪獣映画を作るとなると、
今日の「ギララ」のように、
昔のパターンを踏襲して、ノスタルジーに
ひたるしかない、っていうふうになるのかもしれない。

仲尾
うーん・・・でも、まだ
スピルバーグの「宇宙戦争」みたいな映画は
作られているからね。
あれもリメイクだけど、時代に合っていたと思うよ。
何が合っていたのか、というとわかりにくいけど
あれも、宇宙からのテロだから。

・・・映画自体も変わってきてるよね。
八王子の通り魔事件や、
女の子が父親を殺してしまう事件、
ああいうことが普通になりはじめてる、
というのがやばい。

矢透
動機というのがない。

仲尾
犯罪映画もやばいし、推理小説もやばいよ。
「動機は何だ?」
っていうことを探すことが
無意味になりはじめてる。

矢透
動機がない、なんてことだとドラマに
ならないもんね。

仲尾
逆に新しい映画が生まれてくる
可能性もあるよね。
作家は、時代の変わり目を
敏感に感じ始めていると思うな。

矢透
ナイト・オブ・ザ・リビングデッド
っていう映画があるでしょ。最初のゾンビ映画。
あれは、ベトナム戦争を反映しているという
話があって。

仲尾
ゲリラ戦のね。

矢透
そうそう。死の臭いが蔓延していた時代の。

仲尾
映画って、おもいっきり社会に影響される
ものだからね。
今日観た「ギララ」にしても、
ただの「ギララ」にはできなかったんだね。
サミットというのを噛ませないと、
面白くなかった。

矢透
ああ!そうか。
あれが出てくるお膳立てをしてあげないと
怪獣が出てこられない。


次回、最終回です!
「「お約束」が映画である」につづきます!