裁判員制度について、語る。編

ヤモリさんは僕の友人で、
法律家を目指しておられます。
裁判員制度について理解を深めるとすれば、
この人をおいて他にいないでしょう!

第3回:無罪が出にくくなった理由

ヤモリ 「9人の罪人を逃してでも、
1人の無辜を保護する」
というのが国家法律の大原則だから。

そういうことで動いてる世界なんだ
っていうことを理解してもらうのは、
意味があるよね。


矢透 大原則としてはそうなんだけど
実際には、無罪が出にくいというか
大原則から外れてきているなー
という印象があるんだけど、
そういうところはどうですか?

ヤモリ それは否定できなくて。

昭和30年代の裁判所っていうのは
意欲的に、正々堂々と
理由を書いた無罪判決が
けっこう出てるんだよ。
ただ、40年代に入ると・・・

なぜかというと
裁判官の能力の問題というより
裁判所のシステムの問題で。

裁判所って、
裁判所事務局というところが
昇進などを管理してるんだけど、
例えば
刑事裁判官が無罪判決を出すよね。
その後で、上の裁判所で

「やっぱり無罪は間違ってる」

ということになったとすると、
無罪判決を出した裁判官は、
「間違った判断をした」ってことで
昇進が止まると言われているのね。


矢透 逆に、「有罪」という判決が、
上の方で無罪になっても
昇進には響かないの?


ヤモリ そんなに響かないよね。

それは、
有罪判決が上の方で破られることが
極めて少ないから。

控訴したときの裁判所っていうのは、
裁判を一から全部やり直すわけじゃないから
一度出された記録を読んだときに
そこにきちんと説明がついていればいいの。


矢透 そうか、有罪がひっくり返って
無罪になることはほとんどないから
まあ、いわば有罪判決が、安全牌というか
そういうことになっていると。

逆に、無罪を出すのは・・・


ヤモリ 勇気が要る。

要するに、結果として
「告訴をした検察官が誤りである」
という判断をすることになるし、

原則としては
普通に考えて、証拠から
「その人はやっていない」
と言える、ちゃんと説明できる可能性が、
1個でも残っていたら無罪になるんだけど
でも
「可能性」だけで無罪判決を出すのは
危ないじゃない。


矢透 つまりそれはあくまで
「可能性」であって
やっていない、という証拠には
ならないから。


ヤモリ そうそう。

灰色であることを、
真っ黒だというか、そうでないと見るかは
その人の合理的な考え次第ってことだよね。

「どっちとも言える、というときには無罪」
っていうのが原則なんだけど、
どっちとも言える、ということは
上に行ったときに
いくらでもひっくり返せるわけで。


次回、「裁判員に期待されているのは?」につづきます!