色落ちとは、「衣服や布地などの色が落ちること。」
はじめは色鮮やかだったものが色あせていく、とは、
まるで人の記憶のよう。
狭い部屋にあふれている、一つ一つの「もの」と、
その記憶を綴ります。

座椅子の話


あるとき、近所のスーパーに買い物に行くと、
「特売品!」
と書かれたコーナーがあって、なぜかスーパーに
そぐわぬ枕やら、布団やらが売られていた。
その中に、座椅子があった。

当時、引っ越したばかりで、畳の部屋には
座布団もなく、食事のときは正座をして、
くつろぐときは畳にあぐらをかいていた。

もちろんそれでも一向にかまわなかったのだけれど、
「特売品!」の座椅子は、大きくて、
背もたれを倒すとまるでベッドのようで、
(僕は背が低いので、座椅子でも充分ベッドになる)
何だか魅力的に見えた。

ただ大きさがやや大きいので、狭いアパートで、
部屋をふさいでいたのは確かだ。
一度捨てようと思って業者を呼んだことが
あるけれど、思いとどまった。

やはりあの安心感は捨てがたいのだった。