色落ちとは、「衣服や布地などの色が落ちること。」
はじめは色鮮やかだったものが色あせていく、とは、
まるで人の記憶のよう。
狭い部屋にあふれている、一つ一つの「もの」と、
その記憶を綴ります。

しゃもじの話


しゃもじというのは、ご飯をよそう道具である。
小さくて、ついついおそろかにしてしまいがちだけれども、
なかなか、あなどれない道具だ。

長年、生活必需品の上位を占めてきた(主観)
だけのことはある。

今使っているしゃもじは二代目である。

一代目は、プラスチック製だった。
僕は横着だったので、あるとき、炒め物を
作っていたとき、フライ返しを使わずに、たまたま
そばにあったしゃもじで、炒め物をしてしまった。

フライパンは当然、熱くなっている。

ふっと炒めるのを中断して、次にフライパンに
投入するための野菜を切っていたところ
(火の通り具合が異なるので、野菜はいっぺんには投入しない)、
嫌な予感がしてフライパンに駆け寄ると、
しゃもじが、ぐにゃりと溶けてしまっている。

プラスチックは、熱に弱いのである。

ご飯をよそう部分が、少しへこんだだけだったけれど、
それから、そのしゃもじは、ご飯をよそうにはひどく
不便なものとなってしまった。
へこんだ部分から、ご飯が、ぼろぼろとこぼれ落ちる。

二代目のしゃもじは、木でできたものを買った。