私は長編小説をこう書いた。あなたはどう書く?

2020/05/26

こんにちは。ヤトミックカフェ運営人の矢透泰文です。

先日、アマチュアの自費出版ではありますが、オリジナル小説「バビロンのデイライト」をAmazonのKindleストアにて上梓しました。原稿用紙で約400枚、といった短めの長編小説です。

無料で配布しようと思ったのですが、無料という設定ができず、やむなく100円といたしました(失礼!)。

「あの」震災から五年、世界は死の淵に立っているような、立っていないような、ふんわりしたところにいた。画期的な技術で、今や欠くべからざるインフラ技術となった「ドライムス」と、世界を覆っている「樹」。この世界は、果たして、どこからやってきたのか?新宿に巣食うマフィアを「ドライムス」で一掃するよう脅しを受けた三流サラリーマン。産業スパイと工場長を兼任する男など、この世界に生きる人々の群像劇。

今回は、記録として、本作をどのように書いたかについて、まとめたいと思います。アマチュアの無名の奴が、そんなもん共有してどうすんだ、という向きもあるかと思いますが、今回のエントリーは、同じく小説をアマチュアとして書いている人(同志のあなたです)に向けています。

というのも、小説を書く人というのは、他の人がどのように小説を書いているのか?について、聞いたり話したりするのが、何よりも好きなものですから。ね?

着想

まず、本作の着想を得たのが、記録によると2014年の11月となっています。あなたは、小説のネタをどのように記録していますか?あるいは記録そのものをしていますか?

私は、アイディアの断片をEvernoteにメモしています。使うアイディア、使わない妄想、書いてみたい文章とか、参考になりそうなネット記事など、とにかくぶち込んでおくのに便利です。ネタ帳はとりあえず「忘れないために」書いておきます。

いつか、あなたとネタ帳をネタにして、語り合いたいものです。

書き始めるまで

あなたは小説を書くとき、タイトルを先に決めますか?それとも、最後につけるでしょうか。あるいは、書いている途中に?

私は、タイトルを先に決める派です。「このタイトルでいこう!」とある日、思いつくことが多いです。「バビロンのデイライト」もそのように、ある日、突然思いつきました。意味は特にありません。言葉の響きとか、文字面とか。

おそらく、私の中で「小説を書くモチベーションの上がるタイトル」というのがあって、そこにヒットすると、ビーンと小説を書く欲、がぶち上がります。あなたがタイトルをどのように決めるのかについて、聞いてみたいものです。

書くための戦略

さて、タイトルが決まったら(あるいは決まらない状態でも)、何を書こう、という厄介な問題について、あなたは、どのように取り組んでいますか?

書きたいイメージが、あるとして、小説のプロットを決めてから執筆にかかるでしょうか?あるいは、決めずにいきなり、書きだしてしまうでしょうか?村上春樹フォロワーの私は、完全に後者です。私は書く前にいっさいプロットを決めずに、いきなり書き始めます。最近は、そういう人が多いかもしれないですね。

ただし、「いきなり書き始める派」の私には、苦い思い出がありました。というのが、その書き方で失敗(書き終わらずに挫折)したということが、あったのです。

というのが、さかのぼること2008年から、書いていた小説があったのですが、数百枚を費やしても、まったく完成に至らず、何度も書き直したあげく、2012年に書くのをやめました。つごう4年間、迷走を続け、とうとうあきらめてしまったというわけです。

私も、プロットを書き直すことで、この停滞を打開しようとしました。しかし、だめでした。なんとなれば、私は、あらかじめ決まったものを書く、という書き方に、とことん慣れなかったのです。

ただ、アウトラインを作る、というのはかなり有効な書き方であり、優秀な書き手の皆さんの中には、おそらくこのやり方で書かれている方もいらっしゃるかと思います。

あなたは、小説を書くとき、なんの迷いもなく、完成に至りますか?あるいは、私と同じような迷走をすることがあるのでしょうか?

4年間を無駄にした私は、1年のリハビリ(過去に書いた小説の書き直しとnoteへの連載)を経て、今度小説を書くときは、「書き終わるための戦略」を持って、慎重に進めようと思いました。

書き終わるために私が取った戦略というのは、以下のとおりです。

連作短編形式にする

私は、そもそも「長いものを書くのは好きだが、長いものを書くのに向いていない」という致命的な欠陥がありました。大学時代に先生に指摘されていたことだったのです。

その欠陥に忠実になろうと思い、私は、「連作短編」という手法を取ることに決めました。いくつかの独立した短編を書きながら、世界観を共通させることによって、長編に仕立てていく、という手法です。

もともと長いものを書くのが得意なあなたや、短編を書くのが好きだし向いている、という幸運なあなたは、ぜひ、その特性を活かしていただきたい。

フリーライティングを使う

私を襲う小説を書くときの難敵は、すなわち「飽き」と「手詰まり」です。

「何を書いていいかわからなくなってしまった」「やる気が出なくなってしまった」というアレです。 あなたはどうでしょうか。そんな怠惰な奴は小説なんか書くな、と言われてしまいそうです(すみません)。そもそも、アマチュアなので、誰からも頼まれていないわけですから、自分が飽きたら終わりです

というわけで、小説をとにかく「書き終える」ため、私は自分を徹底的に甘やかすことにしました。

すなわち、私は今回、何も考えずに、最初からゴリゴリと書いていきました。フリーライティングの手法を使って、とにかく手を止めずに書く、ということをやりました。「何を書いていいかわからない」と思ったら、そう書きました。「なんかつまんねー」と思ったら、そう書きました。

私の場合、途中で「飽き」てしまうと、数週間くらい書くのをやめることがあり、そうすると、ますます「飽き」が進行して、書くのが嫌になってしまう、というどうしようもない負のスパイラルに陥ることがあります。

懸命なあなたであれば、そんなことにはならないのかもしれませんが、とにかく、書き終えるのが重要と思い、そのためにとにかく書き進めることにしました。

クソみたいな文章も、つながりのない内容も、いったん気にせずに、とにかく書き終わろうと思いました。

あなたは、小説を書くとき、文章にこだわって書いていきますか。あるいは、ざざっと書いてから、推敲に時間をかけますか?私は後者でしたので、まあとりあえず書き終えてしまえば、なんとかなるだろう、と思っていたのです。

このように、「書き終えるための戦略」をもって臨んだのが功を奏し、何とかかんとか、書き終えることができました。

完成させるまでの道のり

「バビロンのデイライト」の初稿を書き始めたのが、2015年の12月くらい。KDPで発表したのが、2018年の5月でしたので、約2年半に渡って、執筆をしたことになります。

いやあ、、懸命なあなたであれば、おそらくこんなに時間がかかることはないと思うのですが、前述したように、私は飽きたり忙しかったりすると、平気で数週間くらい放っておいてしまうので、それが良くないですね・・・。

ともあれ、どのように小説を書き進めたか、記録しておきます。一人のナマケモノの恥ずかしい記録ということで・・・。

初稿

先ほど書いたように「バビロンのデイライト」の初稿を書き始めたのが、2015年の12月くらいでした。着想自体は2014年にありましたから、さあ書こう、となるまでに、1年を要したことになります。

そして、初稿を書き終えたのが2017年の2月でした。約1年をかけて、書き終えたことになります。初稿には、フリーライティングで書き飛ばしたクソみたいな文章や、ストーリーとしてつながりのない内容、意味のない内容が満載でした。

しかしなんとか、書き終えることはできたので、ホッとしました。

第2稿

ただ、そのままでは、とてもではないが作品としてはまっっっったく成立しませんでしたので、全てに手を入れました。

人によると思いますが、私は書き直しが嫌いな方ではないので、面倒くさいなーと思いながらも(好きでやっていることなのに、どうしようもないですね)、比較的楽しく書き進めることができました。0から書くのと、1を10にふくらますのは、後者のほうがずっと楽です。

第2稿が完成したのが、2017年の12月でしたので、書き直しに約10ヶ月かかりました。これもだいぶ遅いほうですよね・・・。サラリーマンだからとはいっても、ナマケモノにもほどがあります。

第2稿ですが、部分と全体を通しての書き直しと調整を繰り返し、何回もしていたので、「第2稿」というメジャーアップデートに至るまでに、数十回のマイナーアップデートを繰り返したイメージです。

第3稿

ここで、初めて人に読んでもらって、感想をもらいました。2年近く、一人で書いていたものを、人に読ませるというのは、とっても緊張します。

そこで、貴重な感想を頂戴することができたので、それをもとに、さらに第3稿に着手しました。

実は、この時点で、小説の根幹に関わる欠陥について、言い当てられてもいたのですが、ここまで来ると、自分の書く力の限界を感じざるを得ず、今回の到達点は、客観的に見るとだいぶ低いが、それはそれで全力であり、悲しいけれどしょうがない、と思いました。

できるところまで到達しよう、ということで、あらためて全体と部分のバランスを整えたり、文体を調整したり、事実関係を整理したりしました。

どんな道具を使って書くか?

あなたは、小説を書くとき、何を使って書きますか?道具の話ですが、まさにこの話も、共有するとワクワクするところです。

原稿用紙やノートに手書きで書きますか?あるいは、PCのワープロソフト、テキストエディタで書くでしょうか?あるいは、ワープロ専用機「ポメラ」を使うでしょうか?スマートフォンを使って書く人もいるでしょう。

私はMacbook Airを使って書きました。MicrosoftのOffice「Word」を使うのも鉄板だと思いますが、私のMacには入っていなかったので、縦書きで書けるツールを探すところから始めました。私は、30字×40行で、ページを設定して書くのが好きなのです。

テキストエディタなら、いろいろあります。今回は、「hagoromo」というエディタを思いきって買って、使いました。縦書きはもちろん、1ページの文字数・行数を制御できるのでおすすめです。行間も私好みでした。

[applink id="865949654" title="Hagoromo" ]

最近だと、Mac用のワープロソフト「egword」も復活を遂げたので、それを使うのもいいかもしれません。

[applink id="1272842196" title="egword Universal 2" ]

たぶんもう手書きでは書けない気がする・・・でも書いてみたい気もする・・・。古川日出男氏の著作「小説のデーモンたち」に、書くのに行き詰まって、手書きで書く、というくだりが出てきますが、フィジカルな感覚を小説執筆に取り戻してみたい、という思いはあります。だからなんやねん、ということと思います。

KDPでの発表

今回のチャレンジとして、Kindle Direct Publishing(KDP)で、出版してみたい、というのがありました。オリジナル小説ではありますが、AmazonのKindeストアで出してみよう、と思ったのです。

というか、枚数が長くて応募できる新人賞がなく、また、note等で発表するとしても、長過ぎる、という課題があり、読んでもらうために、とり得る現実的な手段としてあったのが、KDPだったのです。

20180716kdp
Kindle Direct Publishing

アマチュアがKDPを使うメリットは、以下のようなものだと思います。

  1. すぐ読んでもらえる
  2. 多くの人に読んでもらえる可能性がある
  3. ロイヤリティが設定できる

そのためには、以下のページに有るようなことをしなくてはいけません。

KDPに登録するために、EPUB形式のファイルを作る必要がありました。そこで使ったのが「でんでんコンバーター」というサービスです。これで、EPUBファイルを作りました。

20180716denden
https://conv.denshochan.com/

表紙画像を作る必要があったのですが、デザインセンスが皆無な私が、仕方なく自分で作りました。あなたなら、きっと懸命な選択肢を思いつくでしょう。

まとめ

小説を書くというのは、どこまでも個人的な営みでありますが、「自分はこうやっている」という情報を共有することが、とっても楽しい営みでもあります。

創作系の趣味に共通することかもしれませんが、今回は、おそらく同じ志向を持っている方(そう、まさにあなたかもしれません)が読むことを想定して、記録しました。

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